バッドエンド確定の貴族の令嬢を守る鬱ゲーに転生したが、レベル9999の『暗黒騎士』(主人公)になっていることに俺は気づいていない
第二話 どうやら俺はこのゲーム(世界)のヒロインと出会ってしまったらしい
第二話 どうやら俺はこのゲーム(世界)のヒロインと出会ってしまったらしい
「さてと、これからどうしようか……」
俺はオークを倒した後、森の中を彷徨っていた。
この森には多くの魔物が生息しているらしく、さっきのようにいつまた襲われるか分からない。
そこで俺は考えた結果――まずは安全な場所を探すことにした。
そしてしばらく歩いていると……小さな小屋を見つけたので、そこに入ることにした。
「ふぅ……。やっと魔の森から出れたぁ」
俺は一息つくために木製の椅子に腰掛ける。
「それにしてもこの小屋、随分とボロボロだな……」
小屋の中を見回してみると、壁や床はボロボロになっており、天井に至っては所々に穴が空いている。天井に空いた穴からは、太陽の光が差し込んでいた。
「眩しー」
俺は少し休憩をした後に立ち上がり、外に出ようとしたその時――突然、小屋の扉が破壊された。
「ん? なんだ?」
俺は破壊された扉の方に目を向けると、そこにはいかにも盗賊の服装をした男たちが、汚れたドレスを着ている白髪の美少女を担いで立っていた。
俺は盗賊の男に担がれている少女を一目見てこう思った。
(あれ? この子……この世界のヒロインじゃね!?)
まあ、そんなことは後で考えるとして……今はあの子を助けるのが最優先だ。
俺は盗賊の男たちに向かって叫んだ。
「おい、お前ら!」
「なんだぁ?」
一人の盗賊の男がめんどくさそうに返事をする。
「その子を離せ! さもないと……お前らの首を斬るぞ」
俺はそう言うと、剣を構えて戦闘態勢に入った。
しかし、俺の言葉を聞いた盗賊の男たちはゲラゲラと笑い始める。
「おいおい聞いたか? コイツ、俺たちの首を斬るらしいぜ!」
「ギャハハハハ! お前みたいなクソガキに俺たちが負けるわけがねぇだろうが!」
盗賊の男たちは口々に俺をバカにする言葉を発する。
しかし俺は臆することなく、剣を構え続ける。
(正直コイツらと戦うのが怖いけど……今はそんなことを気にしている場合じゃないよな)
すると突然、盗賊の男たちの背後から別の男の声が聞こえた。
「おいおいお前ら、あんまり油断すんなよ? このガキが身に纏ってる鎧と剣、見たことがねぇからなぁ……」
「りょ、了解です!」
盗賊の男たちは慌てた様子で返事をしている。
(どうやらこの男がリーダーらしいな)
俺は盗賊のリーダーらしき男に向かって問いかける。
「お前がリーダーか?」
「ああ、そうだとも。俺たちはこの森で盗賊をやっているんだがよぉ、最近稼ぎが悪くて困ってんだぁ……」
そう言うと、盗賊のリーダーはニヤリと笑った。
そしてそのまま言葉を続ける。
「だからよぉ……てめぇの装備と金目の物を置いてけぇ! そしたら命だけは助けてやるよぉ……」
盗賊のリーダーは舐め回すような視線で俺を見つめてくる。
俺はそんな男の言葉を聞いて思わず笑ってしまった。
「何がおかしい?」
盗賊のリーダーは不機嫌そうな声を上げる。
「いや、だってさ……お前のような雑魚相手に俺が負けるわけないじゃん」
俺がそう言うと、盗賊のリーダーの額に青筋が浮かんだのが見えた。
どうやらかなり怒っているようだ。
「クソガキのくせに……調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
盗賊のリーダーはそう叫ぶと、腰に差していた剣を抜いて襲いかかってきた。
俺は攻撃を難なく躱し、カウンターを仕掛けた。が、しかし、俺の攻撃は躱されてしまい、逆に蹴りを入れられそうになったので後退する。
「ほう……。なかなかいい動きするじゃねぇか。ならこれはどうだ!」
盗賊のリーダーはそう言うと、今度は連続で突きを放ってきた。
俺はその攻撃を難なく躱し続ける。
「ハッ! そんなもんかよ!」
俺は挑発的な言葉を盗賊のリーダーに投げかける。
すると盗賊のリーダーはニヤリと笑い、今度は先程よりも速い斬撃を連続で放ってきた。俺も負けじと応戦する。しばらくの間、俺と盗賊のリーダーによる攻防が続いたが、徐々に俺の方が優勢になっていった。
そしてついにその時がきた。
俺が盗賊のリーダーの剣を弾いたのだ。
その衝撃で盗賊のリーダーはバランスを崩したようで、そのまま尻餅をついた。
「ぐっ……!」
盗賊のリーダーは小さくうめき声をあげると、悔しそうに顔を歪めていた。
そんな様子を見守っていた他の盗賊たちが、リーダーを助け出そうとこちらに向かってくる。
「リーダー!」
「嘘だろ……。リーダーが……あんなガキに!?」
などと口々に叫んでいる。
俺はその隙を狙って一気に盗賊のリーダーとの間合いを詰める。
そして、盗賊のリーダーの喉元を連続で何度も切り刻んだ。
盗賊のリーダーは大量の血を喉から吹き出しながら倒れる。
残りの盗賊の男たちは、俺が盗賊のリーダーを倒してしまったため呆然としている様子だったが……すぐに我に返ったようで、剣を持って俺に襲いかかってきた。
しかし、俺の敵などではない。
あっという間に俺は、残りの盗賊の男たちを倒してしまった。
「ふぅ……」
俺は大きく息を吐いて呼吸を整える。
(正直コイツらと戦ってる時、怖かったけど……勝てて良かったぁ~)
「あ、あの……!」
俺が安堵していると、背後から声をかけられた。
振り返るとそこには、盗賊に
少女は俺よりも背が低く、年齢は俺と同じくらいと言ったところだろうか?
とてもかわいらしい顔立ちをしている。
「助けていただきありがとうございます!」
そう言って少女はペコリと頭を下げる。
俺は慌てて口を開いた。
「いえいえ! 気にしないでください! 助けて当たり前なので……」
「ですが、本当に感謝しています。あのままだと私は、あの男たちに酷い扱いをされていたでしょうから……」
(まあ、確かにそうだったかもな……)
俺は心の中でそう思う。
「あの、もしよろしければお名前を伺ってもよろしいでしょうか? 私は、アリス・シルイエッタと申します」
アリスと名乗った少女は、そう言って微笑む。
その笑顔はとても美しく、思わず見惚れてしまうほどだ。
「えっと、俺は……梶隼人です」
俺がそう名乗ると、アリスは驚いたように目を見開いた。
そして、すぐに嬉しそうな表情を見せた。
「梶隼人様……大変素敵なお名前ですね!」
「そ、そうかな……?」
俺は照れ臭くなって頭を掻く。
すると、突然アリスが俺の手を握ってきた。
「あの、もしよろしければ……私とお友達になってくれませんか?」
そう言ってアリスは上目遣いで俺のことを見つめてくる。
俺は一瞬ドキッとしたが、すぐに冷静になった。
「も、もちろんいいですよ」
(こんな可愛い子にお願いされたら……断れるわけないじゃ~ん!)
「本当ですか!? お友達になれて嬉しいです! これからよろしくお願いしますね、隼人様!」
そう言って笑顔を見せるアリスはとても魅力的だった。
こうして俺とアリスの出会いが始まったのだった。
バッドエンド確定の貴族の令嬢を守る鬱ゲーに転生したが、レベル9999の『暗黒騎士』(主人公)になっていることに俺は気づいていない 髙橋リン @rin2005
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