バッドエンド確定の貴族の令嬢を守る鬱ゲーに転生したが、レベル9999の『暗黒騎士』(主人公)になっていることに俺は気づいていない

髙橋リン

第一話 どうやら俺はバッドエンド確定の鬱ゲ―の世界に転生してしまったらしい

 『キャルメリア・シャウンド』というゲームをご存じだろうか?

 このゲームは、一言で表すと『貴族の令嬢を敵から守る』である。

 このゲームの主人公はとなって令嬢を守るのだが……最後はで終わってしまうのだ。


 どうやらそんなゲームの世界に俺――梶隼人かじはやとは転生してしまったらしい……。(ちなみに高校2年生だ。ボッチだったけどな……)


「ハッ……ハハッ! マジかよ……」


 この世界に転生してしまったのは――学校が終わって帰宅中に横断歩道を渡っていたら、大型トラックが信号無視をしてそのまま俺のことをはねたのだ。その後、俺は救急車に運ばれて病院に着いたが、意識をなくしてそのまま死んだというわけだ。


 そして現在、俺は転生して『キャルメリア・シャウンド』の世界にいる。


「まあ、それはいいとして……ここはどこだ?」


 俺は転生してすぐにこの世界がゲームの世界だと理解するのと同時に、自分が置かれている状況をすぐさま理解した。そして、自分のいる場所が明らかに異世界だということも……。


 俺が今いるのは、ゲーム内に出てくる『魔の森』だ。

 この森は魔界とつながっていると言われているが、実際どうなっているかはよく分かっていない。だが、この異世界ゲームは実際に魔界から魔物が出てきているとされているため、あながち間違ってはいないのだろう。


 そしてこの『魔の森』は、ゲームで言うところのチュートリアルステージだ。

 ここでプレイヤーは初めて武器や防具もなしに魔物と戦わされる。


「さてと、とりあえずこの森から出ないと……」


 俺はそう言って森の出口を探索し始めた。


♦♢♦♢


「うーん、なかなか見つからないなぁ……」


 俺はしばらく森の中を探索したが、出口が見つからずにいた。


「これは困ったぞ……。うん、ちょー困った」


 途方に暮れていると、突然背後から物音が聞こえた。


「ッ……!?」


 俺はすぐさま後ろを振り向くと、そこには棍棒を手に持った大きなオークが立っていた。


「ブゴォォォォォォォォォ!!」


 オークは雄叫びを上げながら、俺の方に突っ込んできた。


(なんでこんなところにオークが!!)


 オークは俺に向けて棍棒を振り下ろしてきた。


「いっやあぁぁぁぁぁぁぁああ!!」


 俺は涙を流しながら間一髪のところでオークの攻撃を躱すことが出来たが、武器を持っていないので反撃することが出来ない。


(ヤバいヤバいヤバい! このままだとられる!!)


 オークは俺に休む暇を与えずに連続で攻撃を繰り出してくる。

 俺はなんとかオークの攻撃を躱すが、このままだといずれられてしまうだろう。


「何か武器になりそうなものはないのか!?」


 俺は周囲を見渡すが……何も見当たらない。

 それどころかここは森の奥地なので、武器が無くて当然だ。


「ブゴォォォォォォォォ!!」


 オークは大きく棍棒を振り上げた。


(まずい……!)


 俺は咄嗟にオークの攻撃を躱そうとするが、時すでに遅し。

 振り下ろされた棍棒は俺の頭上を涼め、なんとか直撃を免れたものの体勢を崩してしまった。


「うわあぁぁぁぁぁっ!!」


 俺はそのまま地面を転がる。


「ブゴォォォォォォォ!」


 オークは再び、寝返ったダンゴムシのような格好で地面に倒れている俺に向かって襲いかかってくる。


(マジでヤバいヤバいヤバい!! このままじゃいずれ死ぬって! 俺、この世界でも死ぬのかよ……。転生してまだ1~2時間ぐらいしか経ってないのに!!)


 俺はなんとか立ち上がり、オークの攻撃を躱そうとするが……完全に躱しきれずに左腕を負傷してしまった。


(いってぇぇぇぇぇ……! クソッ! どうすれば……)


 俺は必死に考えるが何も思いつかない。

 その間にもオークの攻撃は続く。


「ブゴォォォォォォォォ!!」


 オークは棍棒を大きく振り上げて、勢いよく振り下ろす。


(ヤバい!!)


 俺は咄嗟にオークの攻撃を躱そうとするが……間に合わず、横腹に棍棒が直撃した。


「ぐはっ……!」


 俺は吹き飛ばされて気に激突し、そのまま気を失いかける。


「ブゴォォォォォォォ!!」


 オークは勝利を確信したかのように雄叫びを上げている。

 

 そして、倒れている俺に向かって棍棒を振り下ろした。


「ブゴォォォォォ!」


 しかし俺はまだ意識があり、なんとか力を振り絞る。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」


 そして俺は立ち上がり、オークの攻撃を躱す。

 額と左腕、横腹から出血をしている俺だが、まだ立っていることは出来る。


「クッ……!」


 俺は歯を食いしばって立ち続けると、オークとの距離をとる。


(ここで逃げても追いつかれるのは分かってる! 分かってはいるけど……逃げる以外の選択肢がないんだ!!)


「そういえば俺って、この世界だとなんのキャラなんだ?」


 ふと疑問に思ったその時――突然目の前にステータス画面が映し出された。


「うわあっ!?」


 俺は驚いて思わず声を上げてしまった。

 しかしそれは無理もないことだろう。

 突然目の前に自分のステータス画面が表示されたのだから。


「これは……俺のステータスか?」


 俺は恐る恐る画面に触れてみる。

 すると画面は切り替わり、俺のステータスが表示された。


――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――

      『キャルメリア・シャウンド』

名前:梶隼人

種族:人族(男性) 

職業:暗黒騎士

レベル:9999

HP:9999/9999

MP:9999/9999

攻撃力:9999/9999

防御力:9999/9999

魔力:9999/9999

俊敏:9999/9999

幸運:9999/9999

<スキル>

《言語理解》《鑑定Lv.MAX》《アイテムボックスLv.MAX》《超回復Lv.MAX》《限界突破Lv.MAX》《不撓不屈》《魔力障壁Lv.MAX》《気配感知Lv.MAX》

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――


「えっ!?」


 俺は自分のステータスを見て、思わず声が出てしまった。

 いや、だっておかしいだろこれ……どうしてレベルが最初から9999もあるんだよ。それに、攻撃力と防御力がカンストしてるし……魔力と幸運までカンスト状態だ。


「いっくらなんでもチートすぎるだろ、これは……」


 俺は自分のステータスを見て愕然とする。

 しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。

 目の前の敵に集中しなければならないからだ。


(だけど、どうやってオークあいつを倒せばいいんだ? 武器はないし、魔力がたくさんあっても魔法の出し方が分からないからな……)


 俺がそう悩んでいると、オークは棍棒を振りかざして攻撃を繰り出してきた。


(ヤッベ!!)


 俺は咄嗟に両腕でオークの攻撃を防御する。

 すると、先程とは違ってオークの攻撃を受けた両腕が無傷で済んでいた。

 それと、先程受けた怪我や傷がいつの間にか治っている。


(すっげえぇぇぇぇええ!! 防御力がレベルマックスだから……だよな!? それなら攻撃力だって……)


 俺は全速力で走ってオークの懐に入り、オークの腹部をグーパンした。


「くらいやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!」


 すると、グーパンしたオークの腹部には大きな穴が開いている。


「ブゴォォォォォォォォォォォォォォオオ!!」


 オークはそのまま仰向けに倒れて絶命した。

 攻撃力のレベルがカンストしているため、オークをワンパンで倒すことが出来たようだ。


「ふぅ……。なんとか倒せたぁ……」


 俺は安堵してその場に座り込む。

 そして、自分のステータス画面を開いた。


「えーと、アイテムボックス」


 すると、突如目の前に大きな扉が現れた。

 その扉を開けると……中には大量の武器や防具が入っていた。


「これは……!?」


 俺はその中から剣と防具を取り出してみる。

 すると、手に馴染むような感覚がした。

 どうやらこの剣と防具は俺にぴったりのようだ。


「よしっ! これで戦えるぞ!!」


 俺は真っ黒の鎧を纏い、赤黒い剣を手にして立ち上がったのだった。

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