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エピローグ

「だけど、32TBのデータって、いったい何が入っていたんだろう」


 斗真を部屋に連れてきて、いつものように話し込んでいたとき、僕はふとつぶやいた。


「まぁ、だいたい察しはつくよ。未練が残ったのはVLのイベントもそうだったんだろうけど、むしろ気がかりはそっちの方だったのかもね」


 斗真が苦笑しながらまるで自分だけ何かを知っているような口ぶりで言う。


「どういう意味だよ」


 自分の兄貴のことを他人である斗真の方がわかっているみたいで、少々いらだった口調で聞き返した。


「パソコンの中身なんて個人の人生の全てとは言わないけどさ、おまえの兄貴みたくネットオタクしてれば、あるいは限りなくそうだったのかもしれないよ」

「え? どういうこと?」


 斗真は得意げに笑みを浮かべる。


「誰だって、自分が死んだ後に自分のパソコンの中身を他人に見られたくないって思うだろう。特に肉親や友達にはなおさらだろうし」


 う~ん、確かにそれはあるかもしれないけど、


「まぁ~ね……そんなもんかな?」

「ああ、そういうもんさ、ほら」

「え?」


 ふと背中に気配を感じて振り返った。

 申し訳なさそうに照れ笑いを浮かべ、頭をポリポリ掻いている兄貴が立っていたような気がしたんだ。



                      「メタバースの幻影」 END

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メタバースの幻影 白鷹いず @whitefalcon

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