けもの様と同棲生活

@darefumi

第1話 ジャングルが好き

ここ数ヶ月はネカフェとカプセルを使った生活をしている。僕は以前都内の会社で働いていたのだが、入社後1年足らずで辞めてしまった。理由は言うならば相性の悪さだろうか。僕はジャングルのような混雑した環境が好きなのだ。東京はコンクリートジャングルだと誰かが言っていた。しかし、実際はジャングルなんかじゃない、乾いちまった砂漠みたいなところだ。

しかし僕は住宅住まいを諦めている訳ではない。アパートを借りると生活が安定する。定職も得て自立する。これが社会人だろ!まだまだ人生これからだ。


という訳で今日は住宅の見学に来た。一人暮らしの1LDKで7~8万円というところか。駅から少し離れた郊外に生活できそうなアパートを紹介してもらった。


おっしょい不動産の大錦さんは割腹の良い大柄な人だ。

「今日はアパートの内見ですね、これは一押しのアパートですよ」

「そうですか、よろしくお願いします。楽しみだなあ」


アパートに入ってみると、綺麗な内装に、整ったキッチン、清潔なトイレとバス、申し分のない見栄えのアパートだ。それにベッドやテレビなどの生活必需品が揃っている。これはすごい。流石に一押しの物件である。


「どうですか、この物件は最高でしょう」、大錦が最後の押しに入った。

「そうですね、ここにしようかなあ」、僕がそう言ったその時、僕の背後からたくさんの動物たちが出現した。クマにパンダにチンパンジー、トラにインコたちだ。動物たちは部屋中を駆け回ると自分たちの居場所を探し出した。クマはベッドに、パンダは椅子に座り、チンパンジーはお風呂を沸かしだした。トラはキッチンに座り、インコはテレビを見ている。ちなみに彼らの使用を妨げると気分を悪くする。この部屋で僕が居れそうなのは、トイレぐらいかな。


「すいません、動物の背後霊が住み着いたので辞めときます!」

「お前、内見の前にお祓い行って来い!」


僕が部屋を借りれる日はいつか来るのだろうか。

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