スマイルシティ

白兎

ようこそ、スマイルシティへ

『ようこそ、スマイルシティへ』

 速水はやみがその街に入ると、どこからともなく聞こえてきた。そこは未来都市『スマイルシティ』。

「あの~、住宅の内見に来たのですが……」

 まだ誰も住んでいない街。速水の言葉を誰が聞いているのだろうか?

『速水様、時間通りですね。早速ご案内致します』

 球形のロボットが速水の目の高さに浮遊していた。

「君が案内してくれるのかい?」

 速水が聞くと、

『はい、ご案内致します』

 速水がたまについて行くと、ロボットが至る所にいて、街路樹の手入れ、芝刈りなどしていた。

『こちらでございます』

 たまが家の前で止まった。

『どうぞ中へお進みください』

 言われるがまま入っていくと、玄関では何か光のようなものが照射された。

「これは何?」

 速水が聞くと、

『殺菌です』

「なるほど」

 靴を脱ぐと、足元に小さなロボットが来て靴を回収した。

「これは?」

『殺菌です』

 靴も殺菌の為にどこかへ運ばれたという事だろう。上着を脱いでかけると、ロボットが来て上着を持って行った。

「どこへ?」

『殺菌です』

 何だか、自分がとてつもなく汚いものみたいに扱われているような気になった。

「先ずはリビングが見たいな」

 速水が進もうとすると、

『お風呂へどうぞ』

 たまが言う。

「え? 風呂を見ろって? まあ、水回りは大事だからな」

 速水が風呂場へ行くと、ロボットに服を脱がされた。

「え? 何?」

『殺菌です』

 着ていた服も下着も取られて、持って行かれた。

『殺菌です』

 たまに押されて浴室へ入ると、

『殺菌です』

 突然シャワーを浴びせられた。

「おい、おい。俺は家を見に来ただけだぞ!」

 浴室から出ると、温風が当てられ、身体はあっという間に乾いた。

『これをどうぞ』

 たまが言って、室内ロボットが服を持って来た。

「ありがとう」

 真っ白な服を着て、

「これで、もう殺菌は要らないだろう?」

 たまに言う。

『殺菌完了です。どうぞ中へ』

 リビングへ入ると、幾つもの室内ロボットが

『殺菌です』

 と言いながら、動き回っていた。

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スマイルシティ 白兎 @hakuto-i

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