モブサイコ100
皆さんこんにちは。
この文章は、私が大好きな漫画である『モブサイコ100』(作: ONE, 裏サンデー ~ マンガワン連載, 2017 年完結)についてその魅力をお伝えすることを目的として執筆しました。今回も未読の方に「読んでみたい」と思っていただけるよう、なるべく本編の内容に立ち入らずに進めたいと思います。また、ここから先の話は漫画も脚本も素人である私個人の意見であり、的外れなことを言っていたとしても大目に見ていただけると幸いです。
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魅力を語る前に、モブサイコ100 がどのような内容なのかについて概要を紹介したいのですが、これがなかなか難しかったので、まずは小学館の公式サイト(SHOGAKUKAN COMIC) に記載されているモブサイコ100 の内容紹介を以下に載せます。
『100になると爆発する少年の名は…モブ!
自己表現がヘタな超能力少年、通称・モブ。
普通の生き方にこだわり超能力を封印しているモブだが、
感情が高ぶり数字が100になったとき
…少年の身に何かが起こる!!!!』
つまり、超強力な超能力を持つ中学生のモブ (影山茂夫) は普段は超能力を封印しているのですが、感情が高まる (脳内の感情比率が 100 % になるイメージ?) ことで、何かが起こる、言ってしまえば超能力が解放されてしまう、というのが話の軸となります。
これだけを聞くと、「なるほど。主人公が無双する系なのか。」と思う方も多いかもしれません。確かに、「主人公がめちゃくちゃ強い」という設定自体は間違っていないのですが、この漫画の魅力は、「主人公が強い」漫画の大きな魅力である『主人公が無双することによる爽快感』では全くありません。
この漫画の魅力は、一貫して描かれる『主人公の成長と主人公の周囲の登場人物の心理変化』であると考えます。
要は、主人公とその周囲の人物たちの人間ドラマがこの漫画の最大の魅力なのです。
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先に述べた魅力について、より具体的に考えていきます。
まず、『主人公の成長』について、設定通り主人公の超能力は作中最強クラスで、戦闘能力的な成長は全く必要ありません。ここでいう、成長とは精神的成長です。
主人公のモブは、超能力を全く特別視しない普通の両親のもとで育ち、幼い頃に常識的な感性の大人に出会ったことで、『超能力は一つの個性に過ぎず、超能力のみに頼った生き方は全く偉くない。学力、身体能力、魅力など他の能力を磨くことで、人として立派に生きていきたい』という考えを根底に持っています。
しかし、努力はしているものの他の能力に関しては全く才能が無いモブが超能力を制限した結果、作中に登場する他の超能力者や霊的存在などから一方的な暴力にさらされたり力の解放を迫られたりします。そして、最終的には、精神的に追い詰められたモブの感情が抑えきれなく( 100 % に) なり、超能力が感情に任せて解放されてしまいます。
このとき、多くの漫画では『今まで強気に出ていた敵が主人公の本気に圧倒されること』に多少なりとも爽快感を感じるかと思います。しかし、この漫画では、そのような感覚は薄いのではないでしょうか。
それは、主人公のモブが普段から不器用ながら自身の信念を貫こうと努力・我慢している姿と、超能力を振るってしまった際の激しい後悔が詳細に描かれており、その主人公の姿に感情移入してしまうためだと思います。
この作品は、そのような失敗や後悔を積み重ねることで主人公が精神的に成長していく様子を軸に展開していきます。
不器用な主人公の後悔や失敗に深く感情移入できるからこそ、逆に、読者はその成長を見て心を動かされ、そのことがこの作品の大きな魅力となっているのだと思います。
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そして、主人公の信念や言動に思うところがあるのは、読者だけでなく周囲の登場人物たちも同様です。
上では『主人公の成長』について言及しましたが、精神的な成長といっても言動が大きく変わるような目に見えた変化はあまりありません。というのも、最初から主人公には『超能力だけが優れていてもしょうがない』という、根幹となる考え方がすでにあるためです。
一方で、老若男女問わず主要な登場人物の多くは自身の精神的な弱さを隠し『超能力だけが優れていれば偉い』という考えを持っています。しかし、不器用だけれど信念に実直な主人公と関わることで、彼ら自身も精神的な弱さに向き合い、考え方を大きく変化させていきます。これは、ほぼすべての主要な登場人物に当てはまり、登場人物の心理変化は主人公の精神性と並んで中心的なテーマとして扱われていると思います。
したがって、このような『主人公の周囲の登場人物の心理変化』が、主人公の魅力、ひいては作品の魅力に繋がっているのではないでしょうか。
特に、既読の方はご存じのように、主人公周りの特に主要な人物は魅力的で人間臭いキャラクターが多く、ネタバレを含むため詳しくは紹介しませんが、彼らの存在およびその心理変化がこの作品の醍醐味の一つであることは間違いないでしょう。
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ここまで、『主人公の成長と主人公の周囲の登場人物の心理変化』が魅力であると述べてきました。しかし、そう言われても、「そういう魅力はそれほど特別なものではないんじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。
これはやはり実際に読んでもらわなければ想像が難しいと思います。
しかし、主人公を含む人間臭い登場人物たちの精神性と、その中で目立つ主人公の心の奥底にある力強さと他の登場人物たちの精神的な弱さとの対比が、がっちりとかみ合ったストーリーには、やはりこの漫画独自の突出した魅力があると私は思います。
実は、この漫画は、世の中の漫画の中でも絵が美麗な方ではないと言っていいでしょう。そのため、触りを読んだ段階で脱落したくなるかもしれません。しかし、何度も言うように、この漫画の魅力はそんなところではなく、ぜひ話をキリの良いところまで読んでいただきたいです。もしかしたら、そのころには登場人物たちの人間味にハマり、気づいたら『主人公の成長と主人公の周囲の登場人物の心理変化』の魅力から止まらなくなっているかもしれません。
この文章が モブサイコ100 を読むきっかけになれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
好きな漫画を語る 和歌山亮 @theta
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