最終話 盗賊団とお上品な3姉妹
「この地下ダンジョンの地図を頭に入れて」
桃子に言われるまま、ぼくはじっと地図を見つめた。
「この隠し扉から出て、敵の背後を突く」
敵の背後を突くって、ぼくは初陣なんだけど。
「そして敵をこの地点まで追いやって」
「追いやるって、ぼく一人で?」
「凛ちゃん、強いんでしょ。敵の数は10名未満。不意をつけばどうにかなるわ」
どうにかなるのか?
確かに重装甲は半端ないけど。
「あたしが陽動になる。りんちゃんなら出来る!」
年下の美少女に言われると、これ以上は言えなくなるのは仕方ない。
ぼくと桃子は狭い隠し通路を急いだ。
アニメやラノベでは、お約束の女子のお尻シーンだが、気持ちはそれどころじゃない事も・・・なかった。
なんて言うか、男って言う生き物がどんな者か知らない少女って、ここまで無防備になるんだ。
それにしてもこの重装甲は、かなり重い。
重装甲だから重いのは当たり前だけど。
相当【重】すぎる。
「あたしはこっち、凛ちゃんはそっちに行って。そしたら背後を突けるはずよ」
ぼくは桃子と別れ、1人で狭い隠し通路を急いだ。
隠し扉を開けると、排水溝のような場所に出た。
排水溝の奥から、爆発音とともに閃光が光った。
ピンク色の閃光だから、桃子かな?
ぼくは適当に予測した。
そして、閃光のする方角へと走った。
しかし、思ってた以上に、速度が出ない。
誰かを背負って走ってるみたいだ。
桃子の陽動のタイミングに、間に合うのか!
人の気配!
雰囲気から、どー見ても悪そうな人々だ。
ぼくは剣を抜くと
「おりゃああああああああああ」
と叫んでみた。
暗闇から現れた伝説級の重装甲を纏った騎士のぼくに、盗賊団は驚いた。
盗賊団の1人が、剣で切り付けてきたが、ぼくは剣はその剣をやすやすと砕いてしまった。さらに幾つかの魔法攻撃を受けたが、ぼくの重装甲は簡単にはねのけた。
なんて威力だ!
「なんでこんな所に騎士が!」
「なんちゅ暗黒面じゃー!暗黒騎士団が来たのか!」
「ヤバい!絶対ヤバい!」
「罠だ!これは罠だ!」
『騎士』この世界では、相当な戦力と思われているのだろう。
さらに『暗黒』も着くと、相当ヤバいのだろう。
盗賊団は、逃走し始めた。
ただこちらは、重たい重装甲。
追い付くはずもない。
しかし、数十秒後、排水溝にしかけれれた罠が作動したらしい。
盗賊団たちは、突然開いた落とし穴に落ちて行った。
排水溝から、魔法使いの姿をした3姉妹が姿を見せた。
「魔法少女究極魔法!ハニートラップ!」
と誰かが叫びながらぼくの肩に着陸した。
「ハニートラップって!それ言っちゃ失敗な奴じゃない?」
「凛ちゃん、乙!」
声の主から桃子だろう。
魔法少女を肩車、重すぎる重装甲でなければ、平和的な光景なのだが、足がふらついた。
ある種のプロレス技を掛けられている気分だ。
ちょっと前まで不登校な少年の身体には、過重すぎる重さだ。
そして、小梅が
「お前、おっせいよ!」
と呆れ、桜子さんが
「大丈夫だったみたいね」
と安堵した。
「桜子さん美しい」と思っただけなのに、小梅にお尻を蹴られた。
装甲を通じてズシンと来る奴だ。
なんで?!
「同志よ!後で桜子ちゃんのパンツ持ってきてあげるね」
ぼくの耳元で桃子が囁いた。
「いらない」
ぼくは、桜子さんの視線を気にしながら、ものすごく小声で返答した。
「おお同志よ!なるほど、ブラか!そう桜子ちゃんのおっぱいは至高。小梅のおっぱいは貧しく、あたしのおっぱいは可能性を秘めておる!」
「お願い黙って」
深い穴の中から、盗賊団の悲鳴が聞こえた。
「この穴の底には何があるんですか?」
ぼくの問いに、桜子さんが
「何百年も前から盗賊団の皆さまが、落ちたっきり上がってこないから、誰にも解らないの」
とさらりと言った。
庭にはゴブリン、地下には何だろう?
怖くなったので、ぼくはすぐに思考を止めた。
桜子さんが杖を振ると、落とし穴の扉は静かに閉じ、盗賊団の悲鳴は消えた。
完
自宅警備兵団と伯爵家の三姉妹 五木史人 @ituki-siso
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