*モンスターハウスだ!

てぃ

*モンスターハウスだ!

「モンスターハウスですね」

「モンスターハウスかぁ……」


 木造二階建ての日本家屋。事故物件いわくつきとは聞いていた。

 不動産業者と一階の内見を終えて二階に上がった……その時、事件は起こった。


 ドアを開けた先はフローリングの一部屋だったが、六匹のモンスターが立ち並んでおり、不用意に一歩踏み込んだ僕に対して彼らも一歩踏み込んできた。


 ──踏み込まれたので距離が近い。

 正面を三叉みつまたもりを持ったサハギンに立ち塞がれ、片方は壁、もう片方は刃毀はこぼれした大剣を担ぐリザードマンに隣接されている。


「……どうしたらいい?」

「相手が洋物ゾンビなら良かったんですがねぇ。ドアを閉めれば良かったんですが」

「下がっていい?」


「それは行動アクションですね。サハギンの銛は長いので背中を刺されますよ」

「……どうしたらいい?」


「仕様上、仕方ないとはいえ敷居を跨いだのはよくありませんでしたね。壁が邪魔でダイアナゴルランが出来ません。逃げられませんね」


位置替いちがえしていい?」

「お断りします」


「そっかぁ……」


 部屋の入口に立っている、僕のちょうど真後ろに不動産業者がいた。


 僕が彼とぶつかるように後ずされば立ち位置を入れ替える事が出来るのだが、その直後に連続で殴られる事が確定してしまう。一発ならまだしも連続で攻撃を受けては間違いなく、おぶつするだろう。


「……仕方ないなぁ」


 この手は使いたくなかったが、背に腹は代えられないか。

 運よく一枚残っていた五百円硬貨を財布から──


「待ってください! その手は確かに有効ですが、必中ではありませんよ!?」

「そっかぁ……」


「それにもし一匹退治できても、残る二匹の行動を無防備な状態で受ける事になってしまうので危険すぎます。おススメできません。短気を起こしてはいけませんよ!?」


 そう言われても切り札を取り上げられたんじゃ、万策尽きたも同然だ。

 最早、辞世の句でも読むしかあるまい。


「……ここで死んだらどうなる?」

「救助が来ます」


「救助が!? 倒れてから!?」


「そうですね。倒れてから、救助が来ます」


 なんてこった……どうかしてるぜ……


「……もう一度聞くけど、倒れてから救助が来るんだね?」

「そのようになってます」


「そうか──」


 なら、仕方ない。背に腹は代えられない。

 僕は不動産業者の腕を掴むと強引に立場を入れ替えた!


 僕はロクな保険に入ってないが正社員だろう不動産業者はそのへんは多分、手厚いことになっているだろう。ここはフリーランスの僕がどうにかなるよりも、正社員の貴方がどうにかなった方が手続きやら何やら効率的なはずだ!


 僕らは擦れ違い、立ち位置が入れ替わる──!

 僕の真後ろに彼がいたので、その時の顔色は窺い知れなかった。


 彼は笑みを浮かべ──


「破ぁ!!」


 ──産業者たる彼の一喝でまるでにあったかのように驚きすくがったモンスターたちの隙をつき、僕らは階段を駆け下りて難を逃れることに成功した!


 ……それにしても、やはり事故物件いわくつきの一軒家はこわいなぁ。

 いくらリーズナブルでも、命が幾つあっても足りないや。




*****


<終わり>


※「あとがき」

「(パロディは難しいですね。自分には向いてないと思いました。仕様を間違えないようにwikiを参照しながらこういうオチにした(最新作は入れ替わりの後でも仲間が行動するらしい?)のですが、もしも間違ってたらごめんなさい。次はもうちょっと、真面目なのを書きたいです、はい……)」


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