真相
当たり前だが、山田君と僕は、刑事さんにこっぴどく叱られた。もっと早い段階で警察を呼べ、と。
あの骨の主は、大家の長男の嫁だったらしい。40年以上も前の話だ。
家族や親類が嫁いびりをしていることを、お遣いに行った先で時々喋ることがあったらしく、家族に見つかり、家に閉じ込められてしまった。表向きには、嘘ばかりをつく仕事もしない酷い嫁だったので離縁したと言い、嫁の実家には、よその男と逃げたと言った。
その後も酷い目に遭わされ、結局殺されてしまったらしい。死体は、暫く敷地に埋められていたが、そこに賃貸アパートを建てないかという儲け話が持ち上がり、一旦、死体は掘り出された。
その後、アパートの一番端の部屋を物置きにし、そこに段ボールに入れた白骨化した死体を紛れ込ませ、隣の部屋には親戚を住まわせた。その時までは、家族の秘密は守られていたのだ。
ところが、その親戚が施設に入ることになってしまった。
家族の方も油断していた。物置きにしているの方の部屋も貸してしまってもわからないのではないか、と。
彼らの欲深さによって、一番端の部屋は、彼女の骨を抱いたまま、素人仕事のリフォームを経て貸し出された。不動産屋には少額握らせ、適当なことを言って誤魔化した。
しかし、恨みとともに壁の裏に閉じ込められた女の骨が、毎夜毎夜、爪で壁をひっかくような音を立てるようになって、事情が変わった。
気味悪がって出ていく住人が続出したのだ。勿論、隣の部屋にも聞こえている。大家は、渋々その2室だけの価格を下げ、格安物件の内見会に混ぜるように不動産屋に指示した。
というような話だった。
山田君のバイト先のコンビニの前。休憩時間に少し話した。
「あの女の人、僕の夢の中に出てきましたよ」
山田くんがニコニコと笑って言う。
「ホントに?」
「『やっとあそこから出ることができました。ありがとうございました』って、頭を下げて、消えました」
「そうか。よかった」
殺され、壁の中に隠された後も、壁を引っ掻き続け、自分を見つけてくれとメッセージを送り続けていたのだろう。
山田君の勇気と行動力に、彼女は心から感謝したに違いない。
彼女が誰にも復讐を考えることなく、このまま安らかに成仏してくれることを願おう。
格安物件内見会 緋雪 @hiyuki0714
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