異世界内見

温故知新

異世界内見

 異世界転生して早1ヶ月。


 バイトやクエストでコツコツお金を稼いでいた俺は、ようやく馬小屋生活を脱出する資金が出来た。


 その資金を持って、俺は昨日、この世界の不動産屋さんを訪れたのだった。



「こちらが、先日ご紹介したお部屋になっております」

「おぉ!!」



 案内された部屋は、レンガの壁に木目の床が敷かれたワンルームだった。



「シンプルながらも趣がある! 素晴らしいです!」

「えっ、そうですか? 至って普通の部屋ですが?」

「あっ」



 しまった! 感動のあまりここが異世界であることを忘れてしまった!



「すみません。この街に来てからずっと馬小屋で暮らしていたもので」

「そっ、そうでしたね。失礼しました」



 申し訳なさそうに頭を下げるお姉さんを見て、微笑みかけた俺は、お姉さんの案内で部屋を見て回る。


 かまど付きのキッチンにトイレに洗面台にバスタブ付きのお風呂!


 うん! どれもこれもが漫画やアニメで見たものばかりだ!

 だが......



「あの! この部屋についてるコンロや蛇口にランタンって......」

「はい、先日ご説明した通り、全て備え付けの魔石に極わずか魔力を流していただけると火も着きますし水も出ますよ」



 おぉ! 剣と魔法の異世界ならこう出なくちゃ!


 ゲームやアニメで見た異世界要素に感動し、小さくガッツポーズをしていると、いつの間にか玄関に戻ってきた。



「案内は以上にですが、こちらの部屋でよろしいでしょうか?」

「はい、家賃も少し高いですけど大丈夫です!」



 転生特典でもらった魔剣のお陰で、今ではソロでも中級レベルのクエストにも行けるようになったし、最近覚えた魔法にも慣れてきたから大丈夫だ!



「分かりました。では早速、戻って賃貸契約をしますね。つきまして、家賃に敷金礼金を加えてまして......」

「うぐっ!」



 そう言えば、この部屋について説明してくれた時に、『契約時は家賃に加えて敷金礼金を一括で払う』って言ってたのを忘れてた。


 その後、家具に充てるはずだった資金が全て敷金礼金に変わり、しばらくの間、寝袋1つで新居に過ごすことになった。


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