第4話 これ少子化対策の政策だった
現在陽菜ちゃんの部屋に避難中。
瑠璃姫さんは涼さんからお説教を受けている。
「ぐす……ぐず……」
「元気出しなさい。痴漢被害に遭った女の子じゃあるまいし………いや、そのまんまね。……悪かったわ。瑠璃姫の暴走を止められなくて」
「……もうお婿にいけない」
「そのときは私がもらってあげるから安心なさい」
「えっ!?」
想定外の返しに思わず涙も引っ込んだ。
驚くボクに対して、陽菜ちゃんはキョトンとしている。
「なに驚いているのよ?」
「いや……さっき私がもらうって」
「ん? そりゃあ婚約者になったんだから結婚も視野にいれるでしょ」
「……婚約者?」
ボクが首を傾げると、陽菜ちゃんがジト目でボクを見た。
完全に呆れているようだ。
「ねぇ妹子くん。そういえば聞いてなかったけど、どうして住宅の内見に申し込んだの?」
「それは住む予定だったアパートが解体業者の誤認で解体されていて」
「ぷっ……それで?」
「このままだとホームレスになるから、すぐに申し込める物件探したら、不動産屋からここを紹介されたわけだけど」
「なるほどね。緊急事態が起きたから避難先として申し込んだと。でも妹子くん……今回のホームシェアマッチングが、政府の少子化対策の政策だってことを忘れてない?」
「忘れてはいないよ。男女がひとつ屋根の下で同棲するのは緊張するけど、ボクには姉さんもいたし大丈夫かなって」
「妹子君なら大丈夫でしょうけどね。けれどちゃんと申し込み要項と政策の内容は読んだほうがいいわよ。これは新年度に合わせて住居と補助金を餌に、政府が行った大規模なお見合いみたいなものだから」
お見合い。
時代錯誤なワードだが、一昔前は主流だった婚活の名前だ。
さっきの婚約者云々にもつながる。
「女性側が許可したら便宜上は政府公認の婚約者になるのよ。だからこんなに女性有利な制度なわけ。このホームシェアリングに参加している時点で、婚活に積極的という扱いになるし、若者のマインドを結婚に向けさせる狙いもありそうね」
「でもボクは一人で陽菜ちゃん達は三人だけど」
「国からすれば誰と結婚しようと一組成立でしょ。本当に結婚すれば、新婚さんにはこの住んでいる家をそのままプレゼント。もちろん恋愛の自由はあるけど、婚約者以外の恋人を作ればこの家からは退去させられる。非難も多いけど、ただお金をばら撒くよりも考えられた政策ではあるわね」
「えーと……つまりボクは陽菜ちゃんと涼さんと瑠璃姫さんの本人と婚約関係にあると?」
「その通りよ」
「しかも住む条件が男の娘」
「そうじゃないと瑠璃姫は許可しないでしょうね」
「無茶苦茶じゃない!? 婚約者が男の娘って陽菜ちゃんはそれでいいの!?」
「いいわよ別に。私が提示した婚約者の条件は、私に幻想を抱かないこと。そして指図しないことだもの。ちゃんと許可出したでしょ」
「あれはまさか……同棲のための条件じゃなく」
「婚約者の条件ね。涼も瑠璃姫もそのつもりのはずよ」
「……ははは。男の娘が条件って」
「そんなわけでこれからよろしくお願いします。婚約者さん」
再会した幼馴染み。
訳ありそうのスポーツ少女。
暴走しがちな大富豪のお姫様。
そして男の娘のボク。
四人の慌ただしくも毎日がお祭りような同棲生活はこうしてスタートした。
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