脱出行(誤爆するなバカ)

花森遊梨(はなもりゆうり)

第1話 戦死→転職できない

我々には三分以内にやらなければならないことがあった。


全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れを振り切り、この戦場を脱出しなくてはならない!


最近のバッファローは陸だけじゃない、海に立っているのだ


ミサイル駆逐巡洋戦艦ーバッファロー

時代が進んで海軍の兵科とやらも整理され、どっかの戦艦ゲームなら間違い無くロケットおっぱいの合法ロリをやってそうな軍艦が海を走る。


「おいマズいぞ一等兵!緊急信号をだせ!アイツら先行してる俺たちがいるのにこの島を焼き払う気だ!」

「緊急信号ってってどれが何色だっけ!?」


もたもたしている暇はなかった。思いっきりバッファロー軍艦から砲弾が飛んできた」


退避ルートは失われた。島の裏のピックアップポイントに辿り着く残された道は

残された道は、敵軍の陣地を突っ切るルートのみ。


絶望しかない。


「一等兵よ、…敵の陣地ってこんなに寂しいものなのか?」

「確かに、敵兵の影がウヨウヨしてるわりにはまるで生活感がない、な」



と思われた。


それから、我々は偶然拾えた人が2人入るダンボールに隠れて敵陣の中にいる。


そのダンボールに巡回警備のスリーマンセルが迫ってくる。ただの敵兵にしてはその軍服の各所から紫色の光が漏れていることをはじめ、個性的な三者三様である。


先行する一体はおかしな方向に曲がった首に虚な頭部をぶら下げている。脇を固める片方は全身が黒く焼けこげ、片方は左腕が肩口から引きちぎられている。


「(生きた兵士かと思いきや、あいつらは全て「ワーカー」か)」


「(あの光ってる軍服が着てる側の肉体を自動的に動かしてるんだっけ?)」


それは民間軍事会社が作り上げたバトルドレスユニフォーム型の戦闘ロボット、正式名称は開発元の社名の頭文字をとって「EWBデジーム」


「(そういうことだ。既にくたばってるから撃たれても平気だし、スーツに大ダメージを負うとアラートを飛ばして蜂の巣をつついたようなことになるってワケさ)」


そうこう話しているうちに異形スリーマンセルはどこかに行ってしまった。


再び被り物から足を出して歩き始めつつ、


「元々は戦死者を人員を割かずに後送したり、自ら国旗にくるまって帰国するためのアレな装備だったが、最近はあんなふうに帰国させずに単純作業や地雷処理、銃弾や手榴弾を防ぐ盾にされることも多い


「ウォーカーとは本来は戦死者を人員を割かずに後送したり、自ら国旗にくるまって帰国させるための装備だからな、生前のルーチンワークこそ繰り返すが、知能が潜入ゲームの敵兵並みになってしまう」


「この陣地だって俺たちも吹っ飛ばされた砲撃で真っ先に焼き払われたんだもんな、生存者は絶望的ってわけだ」


「ピッチアップして敵陣の真ん中を通るぞ、あんなふうに連中は巡回ルートを歩き回るとか、荷物を運ぶとか、設営するみたいな行動を繰り返してるだけなんだからな」


「剥き出しの姿さえ見られなきゃ銃口さえむけられねえ、そもそも陣地が邪魔なのは機関銃やら鉄条網で入れないからだ。ど真ん中さえ突っ切れれば大した距離じゃない」


そんなふうに希望の光が見えた時、バサッという音ともに、明るい光が2人を包んだ。


「「なっ………!!!」」


ダンボールを持ち上げたのはおしゃぶりのように軍用拳銃を銃口から咥えた少年くらいの年の「ウォーカー」であった。


敵地にいる全ての「ウォーカー」が2人の方向に向き直った。


陣地が邪魔なのは機関銃やら鉄条網で入れないこともあるが、それらをスルーしてうっかり入ると、こうして圧倒的数の不利に立たされるということも忘れてはならない。



だが、安心してほしい。


これを読んでいる人がいるということは、この体験を書き綴ったものがいる、つまり俺たちはあの島で焼き払われたり、遺族年金のタネにならなかったということだ。


だから君たちに伝えておきたいことがある。


俺はもう軍隊をやめるぞ。タダで大学に行くために近代ゾンビ相手に無双ゲーとか割に合わない!こんなことするくらいなら貸与型奨学金を本来より早く返すために働いてやるよ!!

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脱出行(誤爆するなバカ) 花森遊梨(はなもりゆうり) @STRENGH081224

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