『貧乏暇あり』

小田舵木

『貧乏暇あり』

 『貧乏暇無し』古来からある言葉であるが。

 私はどっちかって言うと『貧乏暇あり』なのである。

 

 私は単発アルバイトと親の仕送りで暮らす駄目な30代男性であり。

 暇を持て余している。

 単発バイトってヤツは。案外に短時間の案件が多かったりするのだ。

 今日だって。昼までは仕事がない。

 朝イチでクソエッセイを書いてみたが。1000字余りのモノであり。

 短時間で書き上げてしまった。

 

 持て余す数時間。

 これが問題なのである。

 そも。貧乏だと。案外に暇つぶしに困るのだ。

 ゲームも漫画も。新しいモノを買おうと思えばカネがかかる。

 かと言って。動画配信サイトはもう飽きた…というか複数のサブスクリプションを契約する私は。生活費の削減の為に、いくつか動画配信サイトを切らなくてはならない。

 

 ああ。数時間。

 この数時間の暇がどれだけ恐ろしいか。

 ちなみに私はうつである。

 このうつってヤツは。考える暇があると―襲ってくるのだ。

 今は単発バイト生活が許されているが―いずれは働かなければならない。ロングタイムで。

 

 働く。

 カネのない私は。『貧乏暇なし』的に働いていなければならない。本来は。

 だが。うつの療養明けである私は。ソフトランディング的に単発バイトをこなすだけだ。

 ああ。親に生活費をたかる親不孝っぷりよ。

 コレじゃあ。まともな社会人とは呼べない。

 

 そして暇を持て余している。

 単発バイトで稼いだカネは全て生活費に消えていく。

 だから。定期的に。こういう暇に襲われる。

 

 仕事が休みの日は更に恐ろしい。

 なにせ。やることが完全にない。

 今のところ、カネのかからない趣味である執筆がある程度は出来ているから良いが。

 執筆を終えてしまうとやることがない。

 だから。安易に眠って一日を潰しがちだ…

 

 眠って休日を潰すような日々は。

 案外に精神にクる。

 過眠の状態をわざわざ作り出しているようなものだからだ。

 過眠は。うつの症状の一つである。

 全てが面倒くさく思えてきて。眠ってしまおうという発想しか出てこない。

 

 ああ、貧乏。コレが憎らしい。

 解決する術は働く事だけ。

 だが。私はまだまだ。働く事に対して自信がない。

 いや。一日8時間の単発をこなしたりしているが、それが毎日続く事が恐ろしい。

 それに長期で働くとなると。人間関係を構築しなければならないのが面倒くさ過ぎる。

 

 私のうつは。

 残念ながら対人関係をトリガーに発動することが多い。

 単純に人と関わるのがストレスなのである。

 私は器量がない人間で。大抵の人間に対して何かを思ってしまう。

 その何か思ってしまう事がストレスの素になり、それが溜まりに溜まって爆発する―

 うん。単純に。対人関係の経験値が少なすぎる。

 ま、学齢期を引きこもりで過ごしたから。私は対人関係に関しては幼稚園児並みだと言っても良い。

 

 暇なら―ハローワークにでも行けば良いじゃない、そうお思いになる方も居るだろう。

 だが。どっこい、ハローワークに行くのは徒労である事が多い。

 いやあ。最低賃金941円の我が福岡を舐めないで頂きたい。

 と言うか、今、福岡の最賃を調べた私は愕然とした、941円か。まだ3桁代なのか。

 ちなみに大阪は1064円、東京は1113円。

 いくら福岡が生活費がかからない県だと言えど。3桁代は希望がない。

 そんな中で、ハローワークに行こうが。アレな求人とエンカウントするだけである。

 

 アレな求人。

 私は過去にそんな求人を踏みまくっていた。

 結果が。うつになった30代である。

 全ては求人を精査しなかった私が悪いのだが。

 うん。働く意欲が湧いてこない一因に、私がロクな求人と出会えない、というモノがある。

 

 今度こそは。

 まともな求人と出会いたい。

 そんな思いで単発バイトに出かけて行くが。

 う〜ん。単発バイトを求人するような職場も大概アレなのである。

 職場に入った瞬間からヤバイ香りしかしてこない現場ばかりなのだ。

 ま、単発で雇ってもらっているから文句を言ってはいけないが。

 

 さて。愚痴をボヤいている内に10時か。

 社会は確実に回転している。私なしでも。それを思うと憂鬱な気持ちになる。

 私だって。過去には社会を回していた一員だったのだ。今や遠い昔の事だが。

 

 後2時間は暇である。全く。コレだから貧乏はいけない。

 カネさえあれば。暇などない。

 …いや。本当にそうなのだろうか?

 カネがあっても。暇をしているヤツは居るような―そんな気がしないでもない。

 私には経験がないから分からないが。

 

 のではなかろうか?


 ふと、私はそう思った。

 人生に真剣であれば。一分一秒が勝負であり。暇などしてる暇さえない…

 私は人生に真剣ではないから。暇なのだ…

 

 人生に真剣になれない。これは私の宿痾しゅくあみたいなモンだ。

 昔から斜めにモノを見る癖があり。

 何事にも真剣になれなかった。

 真剣になろうとすると、私のクソ精神が邪魔をするのである。

「そんなにマジになるような事か?コレ?」

 マジになれなかった私の行く末がうつであり。そして暇である。

 

 30代の男が。

 平日の昼間っから暇をしているのは頂けない。

 そして。その原因は。貧乏であり。人生に真剣になれない私である。

 

 さ。

 今日から真剣に人生にぶつかろう…なんて思ってはみるものの。

 人生に真剣になるとは。どんな感じなのだろう?

 全く分からない。

 

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『貧乏暇あり』 小田舵木 @odakajiki

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