第7話スポーツ大会

「明日スポーツ大会なのに雨かぁー。」


ミラはポツリとこぼす。


「こんだけ降ってたら明日は晴れてもグラウンドぐちゃぐちゃかなぁー。」


それをナオが拾う。


「あー、そしたら出来ないね…。」


「うーん。」


「午後からはメチャクチャ晴れるらしいですよ。」


放課中、ミラとナオは並んで空を見上げていたが、突然男性の声がしてミラとナオはビックリしてそちらを見る。普段は滅多に話しかけてこないケイゴが、スーッとミラの隣に並んでニコニコしている。


「な」

「ケイゴ先生!」


ミラは目を白黒させて固まる。一方ナオは意外と冷静だ。


「華峯さん、驚きすぎですよ。」


「だって…。」


「華峯さんはアナウンス担当でしたよね?」


「はい。」


「明日はアナウンステント設営もありますので、少し早く登校して欲しいそうですよ。」


「分かりました。」


ケイゴはそれだけ伝えると教室を出て行く。


「テント設営なんて、放送部の男子にやらせればいいじゃない。」


「まぁまぁ。そうは言っても基本的には使用人の方々がやっちゃうから。付き人を早く寄越せってことだよ。」


「ふーん。」




***当日



「華峯さん、おはよう!」


「結城先生、おはようございます。」


ミラが校庭にやってくると、既に何人かの生徒が来ており、付き人達がテント設置や機材運びを手伝っている。


結城はミラを見るなり微妙な顔をし、何か言い淀んでいる。


「何ですか?」


「あー…華峯さんは…付き人とかやっぱり居ないよね?」


「はい、居ませんね。」


「うーんどうしようかなぁ(-。-;」


結城の手には雑巾とバケツが握られている。


「重たいものは運べませんが、掃除とかなら得意ですよ!!」


「…じゃぁ……。グラウンドの水分を雑巾で吸って欲しいんだケド…。」


「あー!成程!わかりました!!」


ミラは笑顔で結城から雑巾とバケツを引ったくると、泥が跳ねるのも気にせずベチャべチャした所に雑巾を置き、水分を吸わせてバケツに絞り始める。


(KAHOのお嬢様にこんなことさせてるのがバレたら、俺が殺されそう…。ケイゴに見つかりません様に。)


願い虚しく、自分の仕事を終えたケイゴが校庭のミラを見つけ近づいてくる。状況を察したケイゴは結城に視線を投げるが、結城は知らんぷりする。ため息を吐いてケイゴがミラへ近づく。


「お嬢、何やってるんですか?」


「あっケイゴ先生!校庭の水分を吸ってるんですよ?」


「でしょうねぇ。貴方の仕事ではありません。」


ケイゴは笑顔でそう言うと、ミラの両手を掴んで立たせる。しゃがんだ時に膝を付いたのだろう、泥が付いている。ケイゴはそれをハンカチで拭った。


「汚れちゃうよ!」


「いいんですよ。その代わりお嬢が綺麗になるんですから。」


ケイゴは結城を睨む。


「結城先生、ミラの仕事では有りません。俺がやるんでお嬢を他の生徒みたいに椅子に座られておいて下さい。」


「ケイゴ、私単純作業嫌いじゃ無いよ?」


「知ってますよ。こういう誰でも出来て人手がいる所をやりたがる癖も知ってます。でも貴方の仕事ではありません。」


「ケイゴだって仕事があるでしょ?」


「有りますが、あとは始まってからの役割なので今はフリーです。汚れますから貴方はあちらへ。」


「でもズボンの裾汚れちゃうよ?」


「貴方の代わりに汚れるんならいくらでも。それに元々汚れるのを覚悟して、着替えも持ってます。貴方は持ってないでしょ?」


「持ってないけど、多少の汚れは気にしないよ?」


ケイゴは盛大にため息を吐く。


「気にして下さい、お願いですから。貴方は仮にも大企業のご令嬢なんですよ!」


「庶民出なんだもん。」


「俺が怒られるんですってば!」


そんなこんながあり、何とかスポーツ大会は開催された。

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ワルい男に…番外編 華峯ミラ @mira-kaho

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