転生したら全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れになっていた
モッツァレラダブル・ピザ彦
第1話
転生したら、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れになっていた。
バッファロー――正確にはその一種であるアフリカスイギュウの群れである。群れを構成する頭数はおよそ100頭。その100頭余りの群れが、全てを破壊しながら突き進んでいる。
破壊するのは、文字通り全てである。木があれば折り、岩があれば割り、天敵のライオンがいれば塵も残さず粉砕する。
無論、それだけ破壊の限りを尽くせば、我が身も無傷では済まない。私が約100頭という、地元サバンナではいささか小さな群れであるのも、破壊に耐えられず、進軍について来られない個体が後を絶たないためである。破壊に尊い犠牲はつきものだ。
とは言え、全く不都合はない。数は少なくとも、残った個体は屈強な戦士ばかりである。
それに、私が破壊し、突き進んだ後には、バッファロー達の蹄により耕された、まっさらな大地が残る。そこにはすぐに新たな緑が芽吹くだろう。それらは、また次の年にバッファロー達の飢えを満たしてくれるのだ。
私が人間であった頃は、自然破壊が重大な社会問題となっていたが、私ごときでは未だに破壊し尽くすまでに至っていない。「全てを破壊して進むバッファローの群れ」としては、まだまだ修行の余地を感じる次第である。
そんなわけで、今の生活は意外にも悪くない。
全てを破壊し、突き進む。突き進んだ先に何かがあれば、破壊する。そして、また突き進む。その繰り返しだ。
私にとって、破壊とは突き進むための手段にすぎない。私が突き進む先に破壊すべきものがある。故に、破壊する。
では、なぜ突き進むのか――食料を得るためか、水を飲むためか――それは実のところ私にはわからない。
しかし、わからなくてもいいと思っている。それを考えるのは、私を構成するバッファロー達の仕事であるし、群れである私は、ただ突き進み、突き進むために破壊する。それだけで満たされているし、逆にそれができなければ私は私を保つことができないだろう。サラリーマンであった人間時代よりも、ずっとシンプルだ。
人間の目から今の私の生き方を見たら、いったいどう思うのだろうか。もはや人間ではない私には、考えもつかない。
人間に戻りたいと思ったことは、幸運なことに一度もない。もっとも、今更人間に戻ったとしても、戻るべき社会はどこにもないが――ご想像のとおり、私が全て破壊してしまったからである――それでも人間に戻ったら、私は何のために生きるのか。そういうことであれば、何となく考えている。
私が人間に戻ったら、何をするか。
無論、破壊するのだ。全てを。
転生したら全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れになっていた モッツァレラダブル・ピザ彦 @wadachon
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