第34話 冷酷美少女の嫉妬
「ねぇ、湊くん。今日の玲ちゃんなんかいつもより怖くない?」
「……そうですね……」
カウンターで接客をする七瀬の表情には笑顔が全くなく、無表情だ。
「いつも必ず現れるナンパ目的の男達も今日は大人しくコーヒーだけ買って帰っていくよ……」
「まぁ、あの眼光に睨まれてナンパできるやつなんてそうそういませんよね」
「確かに……女の私でもあの瞳に睨まれて罵倒されたら立ち直れない自信あるもん。」
「俺もです……」
まだ言われたことがないからわからないが言われたら恐らく心に深い傷を残すことになるだろう。
現に今少し想像してみただけでもかなりダメージがきた。
いつもなら作り笑いくらいはしていたはずなんだが……まさかここまで怒らせてしまうとはな……参った。
確かに婚約者とはいえ許可もなく触るのはよくなかった。帰ったら謝罪を入れておこう。
「でも湊くん、玲ちゃんに結構似てるよ」
「そうですか? 全然似てないと思うんですが……」
「特に人を寄せ付けない雰囲気、価値観とか結構似てると思うよ。絶対相性いいって。付き合ったりしないの?」
「……しませんよ」
流石に言えないよなぁ……婚約してるなんて……
「でも恋はいいよ、君も一回は経験した方がいい。例えそれが大失敗だとしてもね。」
「店長も恋とかしたことあるんですか?」
「はは……さて、どうだったかな。忘れてしまったよ。」
「店長、美人なんですから恋人でもいるのかと思ってましたよ」
「湊くん……それ私が結構気にしてるところなの……」
「あ……すみません……」
どうやら店長の地雷を踏んでしまったらしい。やはり結婚していないこと気にしていたのか……相手はいくらでもいそうだが……
ふと入り口の方を見ると話している間に続々とお客さんが入店していた。
これは……今日は忙しそうだ。
「お、どうやら稼ぎ時みたいだね。お喋りはここまでにしておこう。私はコーヒー作るから湊くん玲ちゃんと一緒に接客よろしくね。」
「わかりました。」
半ば強制的にカウンターへと行くように言われた俺は七瀬の横のカウンターへと立つ。
一瞬チラリと七瀬がこちらをみたがすぐに仕事に戻った。
まだ怒ってる……まぁいい、とりあえず仕事をしよう。
俺はできるだけ顔に笑顔を浮かべ接客を開始する。まず一人目は高校生の女の子だ。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」
「……」
何故か俺の顔をじっと見たまま固まる女の子。
もしかして……まだ顔怖かったか?
「お客様?」
「あっ!? す、すみません……」
ようやく自分が固まっていることに気づいたのか慌ててメニューを見始めた。
「あ、あの……おすすめのメニューとかってありますか?」
「それでしたら、このキャラメルラテのミルク増量が飲みやすくておすすめです。」
ま、俺としては断然ブラック派だけどな。
ここはあくまでも高校生の女の子に対してのおすすめだ。
「じゃ、じゃあ、それで!」
「ありがとうございます、ではあちらの方で商品をお受け取りください。」
「は、はひぃ……」
爽やかに微笑むと彼女は何故か顔を朱色に染めてそそくさと逃げるように受け取り口の方へと向かっていった。
結構丁寧にやったつもりだったんだが……まさか逃げられるほど怖かったとは……少しショックだ。
もっと接客の練習をしておかないとな。
ん? なんだ……悪寒が……
ふと横を見ると七瀬がこちらを絶対零度の冷たい眼でじっと見つめていた。
その瞳はよく見覚えがある。学校で他の生徒たちに負けるような極寒の瞳だ。
まさか俺もその視線に睨まれるとはな……なるほど……これは……精神に来るな。
「……なんだ?」
「……別に、なんでもないわ」
そう言って七瀬はそっぽを向いてしまった。
一体なんなんだ……
俺も仕事に戻ろうと視線を外そうとしたところで一瞬七瀬が小声で何かボソッと呟いた。
『私の前で他の女の子と仲良くしないでよ……』
【あとがき】
最後までお読みいただきありがとうございます!
この度なんと! 本作、『黒髪清楚の冷酷美少女を助けたら、俺と二人きりの時だけデレるようになった件』が書籍化いたします!
これも読者の皆様の応援のお陰です!
本当にありがとうございます!
これからも黒髪清楚の冷酷美少女をよろしくお願いします!
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黒髪清楚の冷酷美少女を助けたら、俺と二人きりの時だけデレるようになった件 ぷらぷら @1473690623
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