第4話 イエス男の娘、ノータッチ

「ただいま〜」

「おかえりなさい、俺さん」

「お疲れ様です〜」  

貴方は珍しく定時で仕事を終えてた帰宅した。クロとシロはイチャイチャと動画配信サイトでアニメを楽しんでいる。チャの姿はなかった。

「あれ、チャちゃんは?お風呂?入ってきていい?」

「いいわけないですけど」

「帰ってきて早々キモ過ぎですぅ…」

クロとシロの塩発言に股間をピクつかせつつ、あなたは浴室に続く扉に耳を澄ませる。中からは何の音も聞こえない。

「音がしない…湯船でおっぱいを浮かせている、のか…?」

「妖精の国に帰りましたよ。ゴムなしで屋上から飛びましょうか」

「産まれてきたことを謝罪して下さいです」

クロとシロは中指を立てて中々きついことをいう。しかし聞き捨てならないことを言っていた。

「え!?チャちゃん、帰っちゃったの!?」

「まぁ、さすがにお泊まりはナシってことで。チャちゃんは女性なので」

「こんなラーメン臭い独身おじさんと夜を過ごしたら、チャちゃんが汚れちゃいますぅ」

「ラーメン臭…誰のせいなのよ、誰の」

クロとシロの為、貴方は少し無理をしてこのマンションに引っ越した。二人のイチャイチャを見るために。結果、食事は毎食カップラーメンの日々だった。3分チャレンジは継続しているものの、未だ成功せず。節約と3分チャレンジのためのカップラーメン生活。まさかカップラーメンの妖精にカップラ臭いと罵られるとは思いもしなかった。

ガックリ肩を落とす貴方を無視して、二人は手を取り合って頬を寄せ合う。

「次、何見ようか」

「クロちゃんが見たいものなら、なんでも♡…あ、俺さん、ポテチ持ってきて下さいです」

「のり塩味でお願いします」

クロとシロに顎で指示されて、貴方はポテチを差し出した。二人の前に正座して向き直る。前話から気になっていた話を切り出すことにした。返答によっては、貴方が法を犯していることになってしまう。

職と面子をかけたデッドオアアライブ。

貴方は覚悟を決めて口を開く。

「君たちは、未成年ですか?」

「いえ?人間換算すると85歳です」

「はちっ!?ジジイじゃねぇか!」

「俺さん、視界に入らないでほしいです。気が散るです」

「んぅっ♡…シロちゃん、塩すぎない?興奮しちゃうんですけど。あとさ、君たちは、男の娘、ですか?」

「男ですよ?どうして疑うんですか?心外です」

「どうして僕達をイラつかせるんですかぁ?少しはその薄毛の下の脳みそを働かせてから喋ってくださいです」

「し、辛辣っ…アーッ!」

あなたは床に転がって痙攣した。クロとシロの、主にシロの攻撃に股間が耐えられなかった。仕事で疲れ果ててしびれる脳に、二人の塩対応は良く効く。しかし痺れてうまく働かない脳でも二つのことが理解できた。貴方は薄毛の下の脳内で反芻した。

彼らは未成年ではない。

彼らは男の娘である。

「いや、信じられるかよ!!!」

「うるさ…聞こえないんですけど」

「反省して自分で喉焼き潰して下さいですぅ」

「らめっ…いまいじわる、らめぇっ♡」

貴方は容赦無いご褒美に、床をのたうち回った。

「人間換算すると85歳くらいかな〜って曖昧なところなんですよ。妖精なので」

「年齢という概念がないです」

「あと男の娘かどうかですけど、男の娘です。証拠は見せられませんけど」

「コンプラに引っかかりますので」

「「ねーっ♡」」

クロとシロは仲良く体を密着させながら教えてくれた。手を絡めあって、頬を寄せ合っている。愛らしい男の娘二人組のキャッキャウフフは実に良い。

「仲良しイチャラブ男の娘とか至高かよ…じゃあ、年齢は大丈夫ね?セーフね?俺、逮捕されないね?」

「未成年略取にはならないですね」

「誘拐罪とか監禁罪になるです?」

「こんな伸び伸びしてる被害者いる!?あとさ、やっぱり、男の娘って件がさぁ、今更だけどさぁ…」

貴方はまじまじと2人を見た。今更だがこんなに可愛い男性がいるだろうか。妖精だからと言われればそれまでだが、妖精はそこまで何でもありなのだろうか。そもそも妖精とはなんなのか。

「男ですって。今朝もシコりましたし」

「どっちが遠くまで飛ばせるか、勝負したもんね♡」

「えっ!?」

「シロったら早いし量もすごくて。圧勝だったよね」

「あっ!やだぁ、恥ずかしいよぉ!俺さんにはナイショなのにぃ…」

「ごめん、ごめん。シロの可愛いところは全部、僕のものだったね。可愛い♡」

「そうだよぉ…クロちゃんも、僕だけのだもん♡」

イチャつくシロとクロに貴方の股間は幸せに包まれている。しかし気になることがあり、前のめりに彼らに詰め寄った。

「し、シコっ、シコったの!?シコりあったの!?」

「友達同士なら普通じゃありません?」

「俺さん、友達いないからわからないんです?」

「なんで知ってんの!?友達いないって!いや、そこはいいよ!友達同士ってそんなことすんの!?なんで!?見せてくれないの!!!あとさ、俺さんって何?いい加減名前を!呼んでよ!」

「嫌です。覚えたくないので」

「名前つけたら情が湧いちゃうじゃないですかぁ」

「そんな、犬猫じゃないんだから…あとね、名前はもうあるんですけど…」

「犬猫程の可愛らしさがないんですけど」

「鏡みて人間を1からやり直して下さ〜い♡」

「んぅうっ♡今日もつよつよぉ♡」

貴方は床でのたうった。もう出すものがない。

床に転がると、ビーズクッションに仲良く座るクロとシロに見下されてたまらない。こんな可愛い子達の言うことなら年齢も男であることも、信じてみようと貴方は思う。

「へへ…今日も可愛いね、二人共」

「俺さんは今日もキツいですね」

「キモいとか不細工とか通り越して、キツいんです」

「あふぅ♡もう、出ないよぉ♡♡♡まったくこのオスガキ共は♡…ちなみに、さっきのシコりあいの件。オカズはなんだったの?」

「『黒ギャルvs白ギャル、100人ぶっこ抜き対決』です」

「接戦だったよね〜めちゃくちゃ抜けたですぅ♡」

「知ってる!それ知ってる!抜けるやつぅ!男だ、君たちは。男だ!!!」

貴方は確信した。彼女達、いや、彼等は男である、と。そのAVは貴方も見たことがある。黒ギャルと白ギャルの懸命な姿は抜かざるを得ない。貴方は土下座した。

「疑って申し訳ありませんでした」

「アニメって面白いね」

「僕たちも魔法使えるかなぁ?」

「嘘ぉ、無視してるぅ〜最高かよぉ…」

『ふひひっ無視されてるぅ〜』

「アヒィっ!!!」

渾身の土下座はガン無視された。背後から笑い声が聞こえて貴方は飛び上がった。振り返るとそこには背後が透けているキャミソール姿のチャがいた。下半身は見えない。どうやらホログラムのようだ。たわわなお胸が零れそうになって、チャはほんのり赤みを帯びている。

『まじで、おもろっ!俺さん、おもろ〜ぉ』

「やっほ〜チャちゃん。酔ってるねぇ」

「チャちゃんは酔ってもイケメンですぅ♡」

「チャっ、チャちゃん!ど、どういうこと?なにこれ??」

『妖精の国からずっと見てました〜まじ、おもろいっすわぁ〜』

チャはグラス片手にケラケラと笑っている。飲むと人格が変わるらしい。イケメンなのに爆乳。脳がどうにかなってしまいそうだ。

『おもろいんでぇ、これからもぉ、よろしく、おねしゃーっす』

「「おねしゃーっす♡」」

クロとシロはチャに同調する。貴方はクソデカボイスで叫んだ。

「喜んでぇえ!!!!!」




END

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