第3話 箱買い

貴方は必死にラーメンを啜っている。もう5カップ目だ。

「うぷっ。3人目の男の娘妖精さん…なんで来ねぇの?」

「こんな便所みたいな所にわざわざ来ませんよ」

「僕も、クロちゃんがいなければこんな便所に来ないです」

貴方はカップラーメンを箱買いした。『魅惑の茶ラーメン〜芳醇味噌味』だ。ちなみにクロは『魅惑の黒ラーメン〜濃い濃い醤油味』シロは『魅惑の白ラーメン〜濃厚白湯塩味』から出てきた。この茶ラーメンからも、男の娘が出てくると信じて貴方はカップラーメンをすすり続ける。なぜなら男の娘ハーレムを作りたいから。

「もう便所じゃないでしょ!引っ越したでしょ!まさかこのラーメンは妖精いないってオチ?」

「いますよ?チャちゃん」

「呼んだら来るかなぁ?」

「チャちゃんて言うの!?言いづらいけど、チャ〜ちゃ〜ん」

さっくり認めたクロとシロの提案に、貴方はチャちゃんを呼んだ。貴方の啜るカップラーメンから湯気が上がった。箱買いは間違いではなかった。

「どうも。カップラーメンの」

「キタ!チャちゃん!?3人目の男の…」

目の前に現れたのは茶髪のイケメンだった。

「チャちゃん久しぶり〜」

「相変わらず格好いいねぇ」

クロとシロはチャの両腕にしがみつく。可愛い子が二人、イケメンに絡みついていた。

「男じゃねえか!!!」

「いえ、あの」

「ちげぇって、男の娘待ってんだって!これじゃ俺とお前の!BLになっちゃうだろうがよ!!!」

「うっわ…鏡見ましょうよ」

「チャちゃんと絡めるビジュアルじゃないんですよ」

貴方はテーブルを叩きつける。クロとシロの辛辣なご褒美も今は耳に入らなかった。

チャちゃんはイケメンだった。イケメンは独身非モテの貴方にとって敵でしかない。

「そ、そんな…大きい音…やめてください…」

震える声に顔を上げると、チャは涙を溜めて貴方を見ていた。イケメンが目を潤ませて貴方を見ている。

「え、泣…えっ?」

「チャちゃん、大丈夫?びっくりしたよね」

「女の子を泣かせるなんて最低」

「えっ、女っ…えっ!?」

貴方は立ち上がった。チャはついに泣き出してしまった。チャはメンズのスーツを着ている。しかしよくみるとそのお胸は豊満で、腰はほっそり、お尻はプリンプリンだった。太ももはムチプリだった。非常に好みのエロボディだ。貴方はゴクリと唾を飲む。

「うっわ。女子ってわかった途端『ゴクリ』だって」

「男の娘男の娘って盛り上がってたくせに。手のひらクルックルですね」

「そんな…言いすぎだよ、二人共」

チャはクロとシロを諌める。貴方は今クロとシロの苦言にもピクピク反応してしまう。美ボディイケウーメン。良い。

「そうだった。ご褒美になっちゃうだけだった。やめよ、シロ」

「そうだね、クロちゃん。チャちゃんもごめんね、嫌な所見せちゃった」

「うぅん。それより男の娘って、言ってるんだね」

チャの言葉に貴方は反応した。

『男の娘って、言ってる』

まるで実は違うかのような言い方だ。

「待って…男の娘って、二人…嘘じゃ、ないよね?」

「…やだなぁ。胸を見れば、わかりますよね?」

クロは両手で両胸に手を添える。

「いや、わからん!あのな、女の子が、みんなお胸あると思っちゃ駄目よ?お胸のないことを気にしてる劣等感丸出し女の子って至高なんだよ?」

貴方の言葉にシロは大きなため息をつく。

「うっわ、出た…至高は男の娘じゃないんですかぁ?」

「男の娘も至高なんよ!興奮したらスカートがお山の形に盛り上がっちゃうっていうエッッッなとこ。わかる?」

「「うわぁ…」」

クロとシロは引いている。チャが笑った。

「ふふっ…面白いね。クロちゃんとシロちゃんが帰ってこない理由がわかったよ。僕もここに、お邪魔させてもらうね」

控え目イケウーメン、チャ。新たな仲間が加わった。

「…待って。クロちゃん、シロちゃん。結局二人は、男の娘なのかな、女の子なのかな」

クロとシロは視線を合わせてから微笑む。

「「秘密です♡」」

「秘密かぁ〜♡」

二人の笑顔に貴方は鼻の下を伸ばす。これだけ可愛いのならひとまず、性別の件は置いて置いてよいのではないだろうか。

それよりも貴方には気になることがあった。

「クロちゃん、シロちゃん。チャさんも。失礼ですが、お幾つですか?」

まさか未成年と同棲しているなんてまずい状況ではないだろうか。性別はひとまず置いておいて。というより、性別を気にしている場合ではない。

クロ、シロ、チャの3人は顔を見合わせて笑った。

「「「秘密で〜す♡」」」



END

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