第2話 男の娘とお引越し
〜前回までのあらすじ〜
『貴方』はカップラーメンから出てきた黒髪ロングの白いキャミワンピを着た清純派美少女妖精からの、ちょっとエッチなことをしたらもっとエッチなことをさせてもらえるチャレンジに失敗した。
美少女は『貴方』に対して塩対応だが、『貴方』にとってはご褒美だった。
あと美少女は男の娘だった。
あれから何度かチャレンジに挑戦したが尽く失敗。
貴方は新たなカップラーメンを手にしていた。
「ちくしょう…チャレンジ成功しないし、理由つけて全然エッチなことさせてくれないし…もう、他の味に浮気するからね!」
「お好きにどうぞ」
「塩ぉ…たまんねぇなぁ、もう…」
美少女もとい美少年は漫画雑誌を見ながら答える。顔をこちらに向けもしない。
貴方はカップラーメンの包装を取り、粉とかやくを中に開けてお湯を注ぐ。
この子が出てきたのとはまた別の味のカップラーメンだ。
蓋のでっぱりを引っ掛けていたら湯気の中から白髪ロングの黒いキャミワンピの美少女飛び出してきた。
「あ、あの、僕、カップラーメンの…」
「妖精!妖精だ!増えた!!」
貴方は白髪美少女を指さす。前回同様、湯気と共に美少女が出てきた。前回は一億食感謝記念だった。今回は一体何なのか。
「今度は二億食目?エッチなチャレンジ第二だ…」
「いえ、ただ来たくて来ました。クロちゃあん!会いたかったぁ!」
「シロ、久しぶりだね。どうしてこんな汚い場所に?」
「クロちゃんに会えなくて、さみしくて、来ちゃった…会いたかったよぉ」
「来たくて来れんの?なんなの、妖精。あとここ俺ん家…」
クロと呼ばれた黒髪ロングの美少年に、シロと呼ばれた白髪ロングの美少女が抱きついた。指を絡めて手を握り合っている。非常にエッチな光景だが大事な確認事項が一つあった。
「シロちゃん…君ももしや男なのでは…」
「あ、はい。男です」
「キタぁー!!!」
貴方は力強くガッツポーズを取った。美少女にしか見えない男の娘が二人。貴方は狂おしいほど男の娘が好きだった。
「だめだよ、シロ。こんな便所みたいなところに来ちゃ」
「クロちゃん、おトイレにいるの?帰ろうよ、こんな所じゃなくて、僕達の国に」
「人んちを便所呼ばわり…待って!帰っちゃうの!?」
「これ読み終わったら帰ります」
「そうなんだ〜良かった。読み終わるの待ってるね」
クロは漫画雑誌を掲げた。残りのページはもう少ない。このままでは二人が帰ってしまう。それは惜しい。
二人はとんでもない美少女、もとい、美少年だ。そしてなんだか仲良しが過ぎる。今も寄り添って漫画を読んでいる。寄り添うというより密着している。肌と肌を触れ合わせている。イチャイチャしている。
この二人を帰してしまってはいけない。このような良質な百合を手放してはならないと、法律で決まっている。百合かどうかはさておいて。法改正されたはずだ。
貴方は決意した。
「引っ越そう」
「少し離れて?読みづらいでしょ?」
「やだよ、クロちゃんから離れないから」
「もう、シロったら…♡」
「クロちゃん、大好き♡」
「無視ーガン無視〜でもいい。もっとやってもろて。決めました。これから住宅の内見に、行きます!」
「そうですか。行ってらっしゃい」
「永遠にさようなら」
貴方は力強く片手を上げる。貴方の決意を無碍にしてクロとシロは仲良く手を振っている。貴方は二人を説得にかかった。
「違うの!三人で暮らすの!綺麗で、三人でも狭くないところ!ほんで、目の前でイチャイチャしてくれ!帰らないでくれ!」
「港区以外はお断りですけど大丈夫ですか?」
「わぁ、タワーマンション?嬉しいですぅ」
「無茶苦茶言ってくるよ、この子達。無理だよ港区のタワマンは!でもね、お兄さん、ある程度お金は持ってます。残業まみれの労基クソ喰らえな会社で働いているので、貯金は、ありまぁす!」
「貯金だけはある独身オジサンですね」
「ぽっと出の男の娘に貢いじゃって。悲惨ですね」
「ひぎぃ♡もっとお願いしまぁす♡」
「「…ははっ」」(乾いた笑い)
そんなこんなで三人で住宅の内見に出かけた。一軒家…はさすがに無理だが三人で暮らすには充分な築浅マンション。
迷わずに、大枚はたいて引っ越した。
それから数日後。
「…じゃあ、お兄さんはお仕事に行ってくるからね。いい子にしてるんだよ?」
「はいでーす」
「早く消えてくださ〜い」
「んっ♡…俺がいない間にイチャイチャしないでね!見せてね、イチャイチャ!」
二人は漫画雑誌から顔も上げずに答える。
あれから二人はイチャイチャはしているものの、なんというか、肝心のシーンが見れていなかった。チューとか、それ以上のあれこれとか。
引っ越しだのなんだのでかなりの金額をかけた。ぜひ二人のイチャイチャを目の前で見せてほしい。そしてその間に挟まりたい。
「嫌でーす」
「そんな約束してませーん」
二人は貴方に顔も向けず答える。
しかし片手がこちらを向いている。中指が立っていた。
「うっ♡…ったく、このクソガキ共♡♡♡」
二人揃って倍の塩対応。
なんだかんだで幸せな貴方は出社したのだった。
END
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