全てを駆け抜けた幻獣の群れ

アリスさんです

単話です

 東京の空は晴れ渡り、朝日がビルの群れを金色に染め上げていた。人々はそれぞれの日常に忙しく、街は活気に満ちている。しかしこの平穏な光景は、空から現れたバッファロー型の雲という不可解な現象によって、やがて不穏な空気に包まれる。この雲は、まるで生きているかのように変形し、徐々に都市伝説の中で語られていた「全てを破壊するバッファローの群れ」の姿を明確にしていく。


 SNSでは、このバッファロー型の雲の写真が瞬く間に拡散され、都市伝説を基に疑問と興奮が交錯する。最初に不可思議な現象を捉えたのは、ある写真愛好家で、彼が撮影したのは、まるで生命を宿したかのような動きで道路を突き進むバッファローだった。この写真が公開されるや否や、実際に目撃されたバッファローの報告が相次ぎ、都市伝説は現実のものへと変わっていった。


 都市の中心部から徐々にその影響が広がり、道路に突如現れるバッファローの群れは、車やトラックを軽々と跳ね飛ばし、信号機や看板を無差別に破壊する。彼らには人間の法律は適用されず、準絶滅危惧種であるバッファローはある種の神聖な存在として扱われるため、直接的な介入は困難を極めた。


 このバッファローの出現からたった数日で、都市の日常を一変させる。交通は完全にマヒし、経済活動は大打撃を受ける。そして、人々の間でバッファローの力強さと神秘性に魅了される者が現れ、「バッファロー教」と名乗る新たなカルト宗教が誕生させた。彼らは破壊を神聖な行為と捉え、バッファローを崇拝するようになる。


 2024年3月3日、都市はバッファロー教徒、またはバッファローの群れによる破壊活動によって異様な静けさを迎えた。その中で、翌日にバッファローが消えるという噂がインターネット上で囁かれるが、多くの人々はそれをただの希望的観測として受け止める。


 そして、2024年3月4日12時になると、道路を破壊し尽くしたバッファローの群れは薄霧の中に消えていったかのように忽然と姿を消す。この突然の解決は、一瞬にして焦燥しきった恐怖と混乱を静けさに変えたが、新たな謎を残す。一部のバッファローがなぜか道路を走り続けるのだ。


 大半のバッファローの消失と共に、都市は再び平穏を取り戻す。バッファロー教の信者たちは、その行動が暴徒として扱われ、逮捕される。しかし、この一連の出来事は、都市伝説と現実の境界を再考させ、人々の心に深い印象を残すのだった。

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全てを駆け抜けた幻獣の群れ アリスさんです @arisusun

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