ご注文はバッファロー
すみはし
全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ
牧場で働くテリーは三分以内にやらなければならないことがあった。
ほかの牧場からもかき集めた五千四百頭ものバッファローをサムのところへ届けなければならないのだ。
「おい、バッファローども! 頼むからもう少し急いでくれ! うちのお得意さんなんだ」
一体こんなに大量のバッファローを何に使うのか、テリーには検討もつかなかった。
だがしかしサムといえば超大金持ちで、欲しいものには金に糸目はつけないという。
大豪邸に住み、何十人ものメイドや執事を雇い、価格も分からぬ調度品が大量に置かれていて、だだっ広い庭には四季折々の花が植えられており、牧場には馬や羊など多種多様な動物が飼われていて、とにかく欲しいものはなんでも手に入れて手元に置きたがる性質がある。
そんなサムことだからこの馬鹿みたいに多いバッファローの群れも気の迷いで欲しくなったのかもしれない。
五千四百頭ものバッファローは木々を薙ぎ倒し全てを破壊しながら突き進んでいく。
何より急ぐからと先払い、かなりの上乗せでで五千四百頭ものバッファロー分の代金を払われたのだから、サムの気が変わらないうちに何としてでも届けなければならない。
破壊したものを全て弁償するにしてもお釣りが来るのだから最短距離をまっすぐ突き進んでいく。
「おいテリー! まだか! サム様がお待ちだぞ!」
大声でジョージの声が携帯から響き渡る。
ジョージはサムの執事でテリーを呼び付けた張本人である。
サムが欲しいと言ったものを取り寄せるのが彼の仕事だ。
「分かってますよジョージ! もうすぐ着きますから!」
ドスドスというよりゴゴゴゴという音の方が近い勢いで五千四百頭ものバッファローはサムの元へ急ぐ。
サムのだだっ広い家の玄関前でテリーは五千四百頭のバッファローにストップをかける。
長年バッファローと付き合ってきたテリーにはバッファローの扱いはお手の物だ。
「ジョージ! 着きましたよ! 早く出てきてください!」
インターフォンを連打しながらジョージを呼び出す。
ジョージはサムの手を引きゆっくりと出てきた。
「サム様、こちらお求めのバッファロー、五千四百でございます」
ジョージは得意げに五千四百頭ものバッファローをサムに見せつける。
「ジョージ、なんだこれは」
「え…サム様が『バッファロー…五千四百…ええと、何だったか、連絡を取る…それを寄越せ』と仰ったのでありとあらゆる所からかき集めたバッファローでございますが…」
眉をひそめたサムを見てジョージは先程の得意顔を情けなく崩し、呆然としている。
するとジョージの後ろからゆっくりと知らぬ男が現れる。
どうやらこの男もサムの執事のようだ。
「サム様、こちら恐らくお探しの『BUFFALO製の6GHz対応のWSR-5400XE6』を持ってまいりました」
「おぉ、これだこれだ!」
サムはにっこりと笑い「これでうちの通信が早くなる」と答えた。
よく良く考えればこの時代に五千四百頭ものバッファローを何に使うというのだ。
ジョージは「もうこのバッファローはどうにでもしてくれ、自由にしろ」と肩を落として呟いたので、五千四百頭ものバッファローの群れは散り散りになって全てを薙ぎ倒しながら帰っていった。
テリーは最近買い換えたiPhone15で妻に今から帰ると連絡を入れた。
ご注文はバッファロー すみはし @sumikko0020
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