甘酒ゼリー
タフィーです
【短編】甘酒ゼリー
私の目は軈て涙に霞む。
杯を手に取り酒の匂いが雨の湿気を伝って鼻に触れると、それは陶酔を施すような甘美な香りで、妻の輪郭が徐々に溶けてゆく。私の口角は上がる。目尻にシワがつく。鎖が片足ずつ外れて、空を舞う自由な鳥になると脳は言う。しかしまたもや私は堕ちた。それは、私を彼方の世界へと運んではくれないのだ。心の盃はひび割れて、幸福が漏れ逃げていく。
そして再び悲しみに打ちひしがれた。
私の足は軈て泥中に竦む。
ゼラチンを匙で掬い取って口に運ばせると、それは脳を刺激するような酸味が続いて、唾液にジワリと溶けてゆく。
目が覚める。心臓が鳴く。
五臓が魂を置いて、私が居るべき彼女の住処へと向かっている。しかしまたもや私は沈んだ。それは、私の記憶と感情とやらを拾ってはくれないのだ。心の虚無感は蔓延って、不幸が充満する。そして再び絶望に浸れた。
不公平だ。死は私を避ける。彼に好かれなかったが故に生かされているのだ。終わりの幕よ、下りよ。
私をどうか彼女の元へ。
連れて行ってくれ
甘酒ゼリー タフィーです @tuffy_1006
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