第3話

 さて、こうして、村長とおなごのどちらが牛鬼かを判断する日がやってきたのじゃ。


 場所は八幡神社の境内じゃった。


 陽が落ちると、村人たちが次々と神社に集まってきた。そして、判定の時刻になるときには、境内の中央にいる村長とおなごを、百人は超えようという村人が取りまいておった。俊英のお陰で、女、子供も含めた村人全員が集まったのじゃ。


 俊英は村人たちに言った。


 「さあ、村長かおなごのどちらが牛鬼か、皆さんで判定してください」


 村人からは「村長が牛鬼じゃ」とか「いや、おなごが牛鬼ではないか」といった声が出た。


 すると、村長とおなごが笑い出した。そして、村長もおなごも恐ろしい牛鬼の姿に変わってしもうたんじゃ。


 二匹の牛鬼は俊英と村人たちに飛び掛かった。


 こうして、俊英と村人たちは全員、牛鬼に食われて、その場で牛鬼になってしもうた。


 夜が明ける前には、牛鬼たちはぞろそろと八幡神社を出て、どこかへ行ってしもうたんじゃ。


 こうして、集団となった牛鬼たちは、俊英が村人を全員集めては、それを牛鬼たちが食うという同じやり方で・・・次々と伊予の国を荒らしていったそうな。


 南蛮の国には、牛よりも凶暴なバッファローという生き物がおるそうじゃな。牛鬼の集団は、それは、あたかも『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』に似ていたそうじゃ。


 これは、わしがひいじいさんから聞いた話で・・・そのひいじいさんも、さらにひいじいさんから聞いたそうな・・・そして、そのひいじいさんも・・・


 だから、これはずいぶん昔の話なのじゃ。・・・じゃから、今はもう日本中の人間が牛鬼になっておるやもしれぬなぁ。。。

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日本昔話「牛鬼」 永嶋良一 @azuki-takuan

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