第2話

 で、俊英は考え抜いた末に、両者を引き合わせることを思いついたのじゃ。


 その日の夜、俊英は今度は村長も八幡神社に連れて行った。


 夜も更けて、丑三つになろうかという時刻のことじゃ。俊英たちの前に同じおなごが現れた。

 

 こうして、俊英は村長とおなごを対峙たいじさせたのじゃ。


 村長とおなごは、お互い相手が牛鬼だとののしりあった。


 だが、俊英にはどちらが牛鬼か判断が付かなかったのじゃ。


 俊英は再び弱ってしもうた。俊英は村長とおなごに言った。


 「私にはあなたたちのどちらが正しいのか、判断が付きません」


 すると、おなごがこう言った。


 「こうなったら、村人に決めてもらいましょう」


 村長もおなごに賛同した。


 「おう、それはよい考えじゃ。村人なら、わしが牛鬼ではないことを分かっておるわ」


 すると、おなごが村長に言ったのじゃ。


 「それは分かりませんよ。牛鬼に食われた人間は牛鬼になってしまうのです。村長、あなたは牛鬼に食われて、もう牛鬼になっているのではありませんか?」


 村長は顔を真っ赤にして、おなごに言った。


 「そういうお前こそ牛鬼であろう。姿を消せるのが何よりの証拠じゃ」


 おなごは笑った。


 「おほほほほ。私はこの八幡神社の神の化身。姿を消せるのは当然のことです。私は、長くこの村を守ってきたのです。村人たちが、私を忘れるわけはありません」


 しかし、問題はどうやって村人を集めるかじゃった。


 村長も牛鬼かもしれぬ。おなごも牛鬼かもしれぬ。となると、村人はどちらの言うことも聞かなかったのじゃ。


 そこで、俊英が村人を集めることになった。


 村人たちは偉いお坊さんである俊英の言うことなら、素直に聞いたのじゃ。

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