極限のフレーズ
まれ
極限のフレーズ
カチッカチッカチッ……
部屋の中に音が響く。
それもあと三分以内に。
時計の音以外にも部屋に響く音がある。
タッタッタッ。シャーッシャーッシャーッ。
この二つは同じものから音が出ている。
が、一つからではない。
複数あるのだ。
しかし、僕のそれからはその音がしない。
手が動いてないのだ。
あと一問だというのに。
星羅のその問の回答欄は未だに空欄である。
科目は数学。
わからなくても何か書けば当たるかもしれない。
それでも、何からすればいいのかそれさえも星羅はわからなかった。
故に星羅は手が動かなかった。
時間はすでに三分を切っているため、迷っている場合ではない。
何か書かなければ。
時間がなくて焦る。
周りはまだ書き続けている。
さらに焦る。
落ち着こうとも出来そうにない。
悔しい。
星羅はこの一問を残りの時間で解くことを空欄のまま諦めた。
では、このまま何もしなかったのだろうか。
いや、そんなことはない。
星羅はこの一問を解くことよりも他の問題の見直しの方が良いと思ったのだ。
もし、解けたと思ってた問題でケアレスミスした方がショックが大きい。
でも、どんなに見直しを繰り返したとしてもこの極限空間、少ない残り時間、焦りで見逃してしまうことはある。
というか、だいたいの人がそうである。
いかにこの状況でケアレスミスをしないか、してても見つけられるかにかかっている。
第一問小問集合。
ここは残り少ない時間でも計算式のミスに気づきやすい。
確実取れていることを星羅は確信した。
ここからが問題だった。
そう。もしここでミスに気づいたとき、時間内に直しきれるのかという問題がある。
星羅は軽く計算式を流し見した。
特に符号が間違っていないか。
第二問は大丈夫そうだった。
第三問。
一行目から確認していく。
残り時間は二分を切った。
二行目、三行目、四行目……
あっ!
星羅は危うく声を出しかけた。
最後のところで軽いミスをしていたのだ。
それは計算で答えは出ているが、代入して答えを書いていなかった。
非常にもったいないミスをしてこの試験を終えるところだった。
星羅が答えを書き直し終わった瞬間、
キーンコーン カーンコーン
キーンコーン カーンコーン
試験の終わりを報せるチャイムが鳴り響いた。
極限のフレーズ まれ @mare9887
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