第55話:貴重な情報

 アレクサンドラがブランディッシュの実の妹だという事が判明した。ルーク達は気を使い、なぜ決別してしまったのか等については特に触れなかった。しかし彼女の表情や、兄の情報をペラペラ喋っている事から推測するに、過去に嫌な思いをしたことはほぼ確実だろう。


「今更なんだけどさ。君達は何でアイツの情報を欲しがっているんだい?もしかして他国の間者だったり?」

「いや、違う。というか昨日は外出しなかったのか?今ガガンはそれに関しての話で持ちきりだぞ」

「昨日というか、翼竜依頼の日から引き籠ってるよ」

「そうか。では一から説明しよう。実は……」


ルークは、オーロラがブランディッシュに目を付けられてから、昨日ギルドで難癖を付けられ、決闘を申し込まれるまでの下りを簡潔に話した。


アレクサンドラは眉間を押さえた。

「ハァ……。うちの馬鹿兄が迷惑を掛けて本当にごめんね……。妹として謝罪させてもらうよ」

「アナタは何も悪い事してないんだから、別に気にしなくていいわよ」

「でも一応、懺悔として知っている情報を全て渡すよ」

「それはありがたいわ」


「まずアイツは、欲しいモノはどんな手を使ってでも手に入れる主義だから、闘技場に何か仕掛けをするだろうね。例え相手がCランク冒険者であろうと」

「ほほう」


「次は審判についてだ。あくまで私の予想だけど、共和国の騎士団長だと思う。クランメンバーを除いて、アイツと唯一仲のいい友人が団長だからね」

「部外者から見れば公平性を重視している人選だが、いざ蓋を開けてみれば、しっかり敵側というわけか。了解した」


「共和国の騎士団長だったら、もしかしたら顔を知っているんじゃない?アタシ達」


オーロラの急な発言に、アレクサンドラは困惑した。

「ど、どういうことだい?」

「俺達は先日の反乱戦争に参加したんだ。だからその際に顔を見た可能性がある。もちろん逆もまた然りだが」

「なるほど。念の為聞くけど、すごい活躍しちゃったり……?」

「そこそこだな」「そこそこね」


「じゃあ共和国の上層部は気づいてそうだね。相手がルーク君だってことに」

「……確かに」


「反乱戦争で思い出したんだけど、そういえば今は亡き王国の元第三王子ルーク・アン・グレイスが、氷の魔女とタッグを組んで大暴れしたって聞いたけど、まさか君達じゃないよね?」

「「……」」


「あの~、マジ?」

「マジだ」「マジよ」


アレクサンドラは盛大に溜息を吐いた。

「ハァァァァ……。今のは聞かなかったことにしておくよ」

「気遣い感謝する」


「続けるね。最後にアイツは共和国上層部とズブズブだし、ギルド本部長も”アイツの力に魅せられた側”だ。あと無駄に英雄扱いされているから、国民からも大人気ときた。要するに……」

「今回は観客を含め、全てが敵だという事か」

「その通り。申し訳ないけど、私が知っているのはこのくらいかな」

「いや、十分だ。ありがとう」

「アタシからも礼を言わせてちょうだい。ありがとね」


オーロラはルークに耳打ちをした。

「ねぇ。彼女には素性を知られちゃってるし、旧世紀の魔導具の分析もお願いしちゃっていいんじゃない?」

「実は俺もそう思った」


(二人で何をコソコソ話してるんだい……)

ちなみに、シルラは彼女の腕の中で爆睡している。


ルークは再び彼女に視線を合わせた。

「なぁ、アレクサンドラ。旧世紀の魔導具とかに興味ないか?」

「旧世紀の……魔導具……?」


「!?!?!?!?!?」


結局、今日は彼女の家にお世話になることになった。


翌朝。アレクサンドラはまた目の下に大きな隈をつくっていた。

「また決闘の前日に来るから、その時はよろしく頼む。サンドラ」

「了解だよ」


「夜な夜な魔導具を調べてくれてありがとうね、サンドラ」

「いやいや、こちらこそ。もうしばらくは寝られないね」


ブランディッシュの情報と分析依頼の報酬として、特に旅に必要のない旧世紀の魔導具をいくつか彼女に分けたのだ。少々豪華すぎる気もするが、そこは信頼できる友人として、そして共和国随一の研究者として惜しみなく報酬を与えた。


「シーたんもまた来てね!!!」

「わふ」


「では、また」

「じゃあね〜」

「わっふ」


三人はガガンからアイン公国までの間にある、"とある山脈"へと向かった。




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第三王子、最下級スキル持ちと言われ追放される~スキル『アクセル』を使い、最速で最強へと至る~ 田舎の青年@書籍発売中 @masakundes

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