~スティングレイ視点~
みんな久しぶりね。
アードレン騎士団大隊長、スティングレイよ。
まずは私の生い立ちから。
アードレン騎士団長の父と優しい母の下に生まれた私は、三歳の時には訓練場の土を踏み、剣を握っていたわ。いつの間にか騎士を目指し、家でも素振りや、たまに父と打ち合いなんかもしていたわね。
確か七歳の頃だったかしら、父に『スティングの剣筋はレイピア使いのソレだ。一流の騎士になりたいのなら、これを使いなさい』との言葉と共に木製レイピアを渡されたのは。これがすごい手に馴染んで、世界が変わったわ。まぁ変わった剣って、それだけでカッコいいじゃない?そういうのにちょっとしたあこがれも持っていたのよね、実は。父は全部わかっていたんだと思う。
私は成長が早くてね。12歳の時には成人男性と同じくらいの身長があったの。だから両親が名鍛冶の打ったレイピアをプレゼントしてくれたのよ。すんごい嬉しかったけど、一つだけ不満があったの。それは父がいつになっても私を一人前って認めてくれなかったこと。もう剣士歴9年だし、一般騎士よりも強かったのに、全然認めてくれなくてね~。まぁ今なら一体なにがダメだったのかよくわかる。だから十二歳で実家を飛び出したのよ。騎士修行として帝国中を旅するために。
それで紆余曲折ありつつも、ソロ冒険者として愛馬と共にいろんな場所を巡り巡って、Cランクまで登ったわ。どこかのギルド支部長が『快挙だ‼』と祝ってくれた。まだその頃は十六歳だったしね。……その二年後に事件は起きたわ。故郷のアードレン男爵家が隣のマンテスター男爵家に宣戦布告されたという情報が飛び込んできたの。もう一心不乱に馬を走らせ帰り、ギリギリのところで参戦できたわ。結果はアードレンの圧勝。
それから数日後、初めてリュウ様とお会いしたの。まぁ私の態度が恥ずかしいくらい悪すぎて、あまり話したくない黒歴史だから、諸々はスキップ。その日が運命の日ね。貴族って嫌なイメージしかなかったけど、リュウ様は違った。もちろんアイリス様とレナ様も素晴らしい方々よ。リュウ様は誰よりも強くて、優しくて、カッコよくて、頭も良くて、カリスマ性もあって、面白くて……でも割とだらしない部分とかもあって。とにかく魅力に溢れた主人なの。会ってすぐに私が一生この人のために戦うと決めたくらいにね。でもそれは他のアードレン騎士も同じだと思う。
そんなこんなで、一緒に首都へ行きエステルさんに会って、大隊長に任命してもらって、西方戦線にも参戦して。いつの間にか首都にできた巨大な第二屋敷の護衛に立候補して、なぜか帝立学園講師になっていたリュウ様からダンジョンの誘いを受けて。これからメンバーを集めて、皆でグラン連邦へ行くところ。そういえばあの坂本龍真殿も来てくれるらしいけど、リュウ様が言うなら本当に来てくれるんでしょうね。本当に人脈がすごい。
あと勝手に嫁を二人も作らないで下さい、リュウ様。
急すぎますって。まぁエステル様とレナ様ならOKなんですけど。
というわけで、今スティングレイ大隊総勢百名は、この広い広い第二屋敷の護衛という名誉ある仕事を一任しているわけだけど、今夜私は屋敷内の巡回をすることになったわ。まぁ本来、大隊長である私は夜任務なんてないんだけど、今回は無理矢理部下から仕事を奪ったのよね。
理由はたった一つ。それは───
(リュウ様とエステル様の夜を調査するためよ……‼)
噂によれば、もう御方々の夜の戦争が始まっているらしいの。
私はまだヴァージンなのに……‼‼‼
リュウ様のためにとっておいてるのに……‼‼‼
たまにリュウ様とのあれやこれやを想像して、夜一人で悶々としているのに……‼‼‼
もう来年弱冠20歳を迎える私が真っ白で、まだ16歳そこらのリュウ様がソレって、いくらなんでも情けなさすぎるわよね、私。そういった理由で、まずは御方々の戦争がどんなもんなんだか、実際に調べなきゃダメかと思ってね。今日はリュウ様のお部屋がある階の巡回を“一人で”やってみることにしたわけ。
深夜。今、私はリュウ様のお部屋の前に仁王立ちしてる。
周囲に人影がないことを確認して。
───さて、と。
耳をドアにぴったりと付ければ……。
『ほらエステル、もっと屈め』
『あぁっ、リュウ、リュウよ……♡』
おっほ。これはいけませんねぇ。
あの体格差で……けしからん……‼
おや、いつの間にか、私の吐息も荒くなってきました。
ここで問題発生です。リュウ様優勢かと思いきや、数分後には。
『エ、エステル、ちょっと休憩を……』
『ダメじゃ‼時間は有限なのじゃ‼ほれ、これを飲めぇい‼』
『ちょ、押し付けるな。わかった、飲むから』
『かっかっか‼龍の復活祭じゃぁぁぁ‼』
一体何を飲まされたのやら。
というか、あれ?エステル様って、ああ見えて性豪だったのね……
恐ろしや。世の中不思議なことだらけね。
「はぁ……はぁ……」
最終的に私は力なくドアにもたれかかっていたわ。
この後お二人は一緒にお風呂に入るっていうルーティンがあるらしいから、早いとこトンズラしなきゃね。
(ごちそうさまでした)
その後、悶々としながら夜の巡回を続けたわ。
「───私も頑張らないとね、いろいろと」