タイナイザーNP

第1話 羞恥の極み

　2222年、地球には地球外知的生命体の登場により、地球の人類に甚大な被害をもたらした。

　その地球外知的生命体の目的は地球資源及び、人類の財産、文化財を乗っ取る事であり、人類の絶滅ただ一つである。

　その方法は至ってシンプルだ。無限に溢れてくる通称バッタ星人を大量に地球に送り込み、人間を抹殺する事である。バッタ星人は、顔が「バッタみたい」だからバッタ星人の名がついた。

　バッタ星人の退治には日本国の日本軍では追いつかなかった。そこで、この時代で世界一の科学力を誇る日本でとある物が開発された。

　それは弾丸も効かないバッタ星人をいとも簡単に倒せる物で、人間の体内に埋め込まるタイナイニウメコマレルヤーツという代物である。

　タイナイニウメコマレルヤーツは人間の体内に埋め込まるタイナイニウメコマレルヤーツを体内に埋め込む事により、タイナイニウメコマレルヤーツが人間の体内でその人間の体内の特性を読みとって、タイナイニウメコマレルヤーツが体内でなんか起こり、タイナイデナンカオコールという細胞分裂が始まり、タイナイニウメコマレルヤーツがナンヤカンヤなって、いやなんやかんやなって、いやナンヤカンヤという急激な成長により、なんだかんだでナンダカンダという科学反応により、核融合か、何か知らん融合が起き、タイナイ二ウメコマレルヤーツが何か知らん物になり、ナンカシランモノが生まれ、そのナンカシランモノが体内で人間に急激な超進化を促し、超強靭な肉体と超強力な特殊能力が生み出されて、それに見合った外見が提供され、超変身を遂げる。

　簡単に説明するとタイナイ二ウメコマレルヤーツによって、ただの人間が最強の戦士タイナイザーに変身出来るのである。

　説明から分かるようにタイナイ二ウメコマレルヤーツは、この時代の間違いなく人類の叡智と言えよう。

　タイナイウメコマレルヤーツがその体内に埋め込まれる人間の特性を読みとって、そのタイナイザーの武器が決まるのである。腕力が強い人間がタイナイザーになれば、腕力を活かしたパンチが武器になるかもしれない。脚力に自信がある人間がタイナイザーになれば、脚力を活かしたキックが武器になるかもしれない。嘘が得意な人間がタイナイザーになれば、詐欺が得意なタイナイザーになるかもしれない。

　そんな冗談はさておき、タイナイザーの一人に葛西晃（かさいのぼる）という42歳の中年の男がいた。噛み砕いて言うと42歳のおっさんである。

　葛西晃は184cm150kgの巨漢で、おならがとにかく臭い。よってタイナイニウメコマレルヤーツは葛西の特性を読みとって、おならを武器にした握りっペになった。

　タイナイ二ウメコマレルヤーツは人間ではない。機械やAI、もしくはサイボーグに近い。その為、人間のように嘘偽りが無く、ひたすら合理的である。　　　

　おならが武器になるなら容赦なく、おならを武器にする。残念ながらタイナイ二ウメコマレルヤーツにおならが下品、格好悪いという概念は無い。

　因みにタイナイニウメコマレルヤーツの適合者は１万に一人である。その中でもタイナイニウメコマレルヤーツ適合率90パーセント以上の葛西のタイナイザーは最上位のタイナイザーであり、最強のタイナイザーである。

　因みにタイナイザーの見た目は日本のヒーロー「仮面ライダー」に似ている。日本政府がタイナイザーの志願者が一人でも増えるように見た目を格好良くしてほしいという要望が込められて開発された為である。

　握りっぺが武器なのでタイナイザー握りっぺである。さすがに名前がダサいので葛西はタイナイザーNPにした。

　今日も東京の中目黒でバッタ星人が現れた。情報を受けて葛西は、タクシーで中目黒に直行した。

　タイナイザーNPの変身ポーズはタイナイニウメコマレルヤーツが決める。決まったポーズをタイナイニウメコマレルヤーツが直接、葛西の脳に伝達する。おならをして、そのおならを握って、いや握りっぺと言えば話は早いか。握りっぺを自分の鼻先に持ってきてこう叫ぶ。

「握りっぺ充填完了、バッタライダーNP変身　　　　　っ！」

　まさに羞恥の極みである。葛西はこのポーズをやるたびに悔しさと怒りと恥ずかしさで気が狂いそうになった。

　葛西晃はタクシーで中目黒に降り立つと、その恥ずかしい変身ポーズを決めた。

　しかし、変身できなかった。葛西は気付いた。「握りっぺ」でなく、「すかしっぺ」だった事に。

　葛西はお腹を叩き、一言

「頼む」

　とつぶいやいた。そして、嫌嫌恥ずかしい変身ポーズを決めてまた叫んだ。

「握りっぺ充填完了、タイナイザーNP変身っ！」

（何故こんな恥ずかしい事を２回もしなければいけないのか畜生っ！）

　そんな怒りも束の間、変身ができなかった。焦りを感じたが、百戦錬磨のタイナイザーNP葛西晃には、すぐに答えが分かった。単純にあまり握りっぺが臭くないからである。葛西の昨日の夕飯が、珍しくヘルシーな物であったのが原因だろう。

　葛西はタイナイザーNPの嫌な思い出を思い出してストレスを増幅させ握りっぺの根源、おならを臭くしようと考えた。

　葛西は大きく深呼吸をし、目を瞑った。するとタイナイザーNPの嫌な思い出が蘇ってきた。

　臭くてタイナイザーNPの戦った後は、その現場が臭くなって社会問題になり、ワイドショーで放送された事、タイナイザーNPではなく「オナラナイザー」とちびっ子に呼ばれてる事、タイナイザーNPのフィギュアが全く売れず販売中止になり、生産数が少な過ぎてレア度上がり、プレミアが付いた事、「タイナイザーというかカメムシナイザーじゃん、っていうかデカいカメムシじゃん、もはや害虫じゃん」って言われ事、「タイナイザー害虫」が検索ワード一位になった事、色々な思い出を思い出してストレスが頂点に達して、葛西は吐き気で

「おぇっ！」

と嗚咽した瞬間、葛西は

（今だっ！）

と思い、また恥ずかしいポーズをして叫んだ。

「握りっぺ充填完了、タイナイザーNP変身っチックショーッッッ！」

　誰にもぶつけられない悔しさと怒りとともに葛西は変身した。周囲に黄色い煙が突如現れ、その煙はうねりだして竜巻になった。一瞬で竜巻が消えると、そこから最強のタイナイザー、タイナイザーNPが現れた。