白熱バトル! 決勝の相手は幼なじみ! 炸裂! 魔法カード『アムネジアストーンの呪い』

生來 哲学

ストリート・デュエルTCG

 あたしには三分以内にやらなければならないことがある。




「チャージ三回! フリーエントリー! ノーオプションルール! 七咲奈々沙、デュエル・イン!」

「チャージ三回! フリーエントリー! ノーオプションルール! 巻村真希乃、デュエル・イン!」




 説明するまでもない。

 何故ならばここはストリート・デュエルTCGの決勝大会の会場なのだから。




『さあ始まりましたストリート・デュエルTCGワールドソルジャー日本大会決勝戦! 七咲奈々沙vs巻村真希乃のグランドファイナル! 実況はおなじみエールと!』

『解説のバチコでお送りします』

『これまでの大会を見てきた皆さんなら分かるとおり、グランドファイナルはチャージ三回ルール、すなわち、持ち時間3分の対決になります。これは他の大会に比べて非常に短いものですね』

『はい、通常この手の大会だとチャージ五回が多いのですが、今大会は参加者が多く、放送時間も押してるので短く決勝を終わらせて貰います』

『スポンサーが神様ですからね、仕方ないです!』

『画面右手の赤髪で黒いトップスを着たヘソ出しホットパンツの少女が七咲選手、画面左手の黒い長髪に金のドラゴンの刺繍の入った白い着物姿の少女が巻村選手です』

『グランドファイナルが共に女性選手というのは今回が初めてですね』

『ええ、優勝候補の銀河最強乃介くんと天下一太郎くんは共に予選で彼女たちに敗れるという大番狂わせが起きて――と、ここで両者デッキを切り終わりました!』

『戦いが今始まります!』

『それでは皆さん! デュエルってみましょーーーー!』

『おにゃしゃーす♪』



「あたしのターン! 手札を二枚捨てることにより、『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』を召喚! これにより――」

「お待ちなさい。貴女の召喚に対して効果を発動いたします。私のライフを1000ポイント支払うことにより速攻魔法『アムネジアストーンの呪い』。これにより貴女が召喚をする度にライフを1000ポイント払うことになります。この効果は毎ターン2回まで続きます」



『出たー! 現環境最強の対抗カード『アムネジアストーンの呪い』! まさか一ターン目から引いていたとは!』

『七咲選手、これはついてないですねー。あれを貼られたら、このターン2回召喚して次のターンで2回召喚しただけで死にますよ』

『うわぁ、聞いてるだけで吐き気のする強カードですねぇ! なんでこれが三枚積み出来るのかとても不思議です!』




【七咲/ライフ:2000ポイント】

【巻村/ライフ:3000ポイント】




「やるわね、真希乃! けど、このまま行かせて貰うわ! 『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』の召喚効果! 互いの山札を十枚、墓地に送るわ! そして墓地にある『華麗に踊る柔道家』のカードの効果を発動! 墓地にメダル魔法が二枚有る時、墓地のメダルカードを除外することで『華麗に踊る柔道家』を戦場に召喚することが出来る!」

「結構ですわ。代わりに『アムネジアストーンの呪い』の効果で貴女のライフを更に1000ポイント減らさせていただきます」




【七咲/ライフ:1000ポイント】

【巻村/ライフ:3000ポイント】



『これは痛い! 七咲選手、もうライフが半分です!』

『あーやだー! この試合見てるだけで辛い!』



「『華麗に踊る柔道家』が居ることにより、墓地の『バレエ・メカニック』を発動よ!」

「――しまった! 対抗します! 速攻魔法『ドライビング・リヴァーサル』を発動! 手札を一枚捨てることで貴女のモンスターの効果を打ち消させていただきます」

「おっとここで『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』の効果を発動よ! ライフを半分支払うことで、真希乃の魔法カード、打ち消しちゃう」




【七咲/ライフ:1000ポイント】

【巻村/ライフ:3000ポイント】



『七咲選手勝負に出ました!』

『バッファローの群れはライフを半分支払うことで相手の対抗行動を全部打ち消せますが、それは諸刃の刃です。ただでさえアムネジアストーンの効果でライフを削られてるのに更にライフを減らすことになりますからね』

『一ターン目の行動とは思えません。まだ二人ともカードをドローすらしてないんですけどね! この危険な行動、まさか、決着までの青写真が見えているのか!』




「対抗は?」

「……ありませんわ」

「ならゴメンネ。墓地の『バレエ・メカニック』の効果を発動。自分の墓地が10枚以上ある時、このカードを除外することにより、相手の墓地の魔法カードを発動することが出来る。指定するカードは――『均衡を強要する天秤』!」

「くっ!」

「運がなかったわね。さっきの山札破壊で墓地にそのカードが落ちるなんて」

「仕方ありませんわ。バッファローの召喚そのものを止められなかった私の落ち度ですわ」

「……『均衡を強要する天秤』の効果により、互いのライフを低い方の数値に変更する! これであたしと真希乃のライフは互いに1000ポイントよ」




【七咲/ライフ:1000ポイント】

【巻村/ライフ:1000ポイント】




『なんたることだー! 一ターン目から両者のライフポイントが残り後僅か!』

『まずいですよ、これは。1000ポイントなら、リーサルが見えてきます。まさか、これ、七咲選手、持ってるんですか? 持ってるんですか? バーンカード!』




「じゃ、手札から『拳の波動』を発動。相手のライフを500ポイント削る。対抗は?」

「ありませんわ。それでターンエンド……なんてことはないですわよね?」

「へへん。真希乃は鋭いね」

「何回対戦してると思ってるのよ」

「そうだね。あたしにストリートデュエルを教えてくれてありがとね。おかげでこんなにも楽しいバトルが出来た」

「あらそう? 私は不服よ。もっと楽しみたかったわ」

「ははは……なら、次はワールドソルジャー本戦で戦おうよ。あたしは先に行ってる」

「待ってなさい、すぐに追いつきますわ」

「うん、信じてる。じゃあ、手札からもう一枚、『拳の波動』を発動。もう一回500ポイントライフを削るね」




【七咲/ライフ:1000ポイント】

【巻村/ライフ:0ポイント】




『決着ーーーー! なんという幕切れだ! 優勝は――七咲奈々沙選手に決定です! いやぁ……こんな試合を見たのは初めてです』

『決め手がコモンカードの『拳の波動』なのがいいですね。髙レアカードをバンバン打ち合った後にぽろりと出た二枚の低レアカードが勝敗を決めるの、私とても好きですよ』

『でも、バチコさん、私思うんですよ』

『なんですか?』

『こんな簡単に一ターンキルできちゃうの、いいんですかね?』

『はっはっはっはっはっ! 一応ここまでの流れは相手の墓地にたまたま『均衡を強要する天秤』が落ちたおかげですし、どちらかというとアムネ……』

『あーーっと! ここで七咲選手と巻村選手が抱き合っています。互いの健闘をたたえ合う、なんと美しい姿でしょうか。

 これにてストリートデュエルのワールドソルジャー日本大会2024終了です!』

『えーと、解説は私、バチコと』

『実況のエールがお送りしました』

『では皆さん次回の大会でお会いしましょう!! さようなら~』




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