バス

羽弦トリス

キャリアウーマンの災難

私にはバスを降りたら三分以内に、やらなければならないことがあった。


私は外資系製薬メーカーに勤務する、米異雲子。今年の夏に32歳になる。

結婚はしていない。彼氏だって。

仕事だけが私の生きがい。


いつものバスに乗った。

会社最寄りバス停まで、40分。つり革に捕まり、英会話の訓練の為に英語のニュースを聴いていた。


!?


うっ、お腹が痛い。

これは、久しぶりの陣痛。最近トイレが近くて参るわ。

途中下車したら、朝のミーティングに遅刻してしまう。

朝食べた、キャビアがダメだったのか?それとも、昨夜の岩ガキ?


私の額は汗で滲む。

バスを降りてすぐのコンビニでトイレを借りちゃお。

三分くらい待てるわよね。

私は、一流大学卒で一流企業の一流の社員。

この、便意だって乗り越えて見せるわ。


市役所前で、乗客の半分が下車した。

私は座席に腰を下ろした。

ねぇ、まだなの?

こんな日に限って、片側交互通行で足止めを食らっている。


ウッ!じ、陣痛が!

冷静になれ!私!

ちょっと、ガス抜きしてやれば良いのよ。


プス〜


うわっ、くっさいわ。私のガスって、こんなに臭いのかしら。

大丈夫。

周りにはバレていない。

あと、10分もすれば最寄りバス停だ。

頑張れ私!ガス抜きでだいぶ楽になったわね。

 

バス車内で、オジサンが震えながらキョロキョロしているのが見えた。


?どうしたんだろ?

ま、関係ないわ。次は最寄りだから、席を立ってバスの昇降口に立っていよう。


オロオロオロオロ〜


うわっ!

車内は騒然した。オジサンがバス車内でゲロしたのだ。


「きったないわね。あんた!大人でしょ?ゲロなんて降りてからしてよ!」


オジサンは、

「出たもんはしょうがねえだろ!」

と、反論。


昇降口近くにゲロを吐かれて、私はイライラした。


プップー、キィイイイ。ガックン。

バスは急ブレーキを掛けた。

その衝動で、私はゲロの海にダイブした。

私はオジサンをぶん殴った。


と、同時に三分経っていた。

結局、間に合わなかった。


チーン

 

終劇

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バス 羽弦トリス @September-0919

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