さよならを覆す最高の方法
結音(Yuine)
アキコ
全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが、アキコの胸中を通り過ぎた。
通り過ぎたから、怒りが収まったわけではない。
訳では無いが、
ふつふつと湧き上がる怒りは、
バッファローによって破壊された。
そう、破壊されたのだ。
目の前には、
物理的に破壊された
あ゛あ゛あ゛あ゛
声にならない声を上げても
時間は戻らないし
破壊されてしまったディスクは元には戻らない。
戻らないのは、中身だ。
そこには、アキコの血と涙の結晶が収められていたのだ。
消えた。
アキコの
泣きたくても、泣けない。
もう。戻らないから。
記録も。
時間も。
流した涙と汗と 思い出の数々は、
破壊されたディスクと共に棄てられてしまうのか。
それは、イヤだ。
くっと噛み締めた唇から、
つっと鉄の味が滲む。
ぎゅっと、握りしめた指先のエナメルが剥がれ落ちる。
誰よ、こんなことしたの!
バッファローだ。
バッファローが、やったのだ。
目の前にバッファローが現れた。
その、黒い体でアキコに触れる。
何よ!
触らないで。
あなたなんて知らないわ。
ふいと横を向けば、
アキコの唇には柔らかいものが重なる。
アキコを包み込む。抱擁。
「どうして……」
アキコの視界には、引っ越しのために捨てられていくモノたち……
「アキコは、ボクたちを祝福してはくれないのかい?」
訴えかける眼。眼。
俯くアキコ。
バッファローと目があった。
バッファローは、
「決めたじゃないか。
そう、ね。
もう、見えないものね。このままでは。
今ではお目にかかることはない代物だものね。
それに……
アキコの腹部で手が重なる。
黒光りする
その後ろから、きらりと光って……
?!
差し出された指輪は、アキコの左薬指にするりとおさまった。
メンデルスゾーンの結婚行進曲が
さよならを覆す最高の方法 結音(Yuine) @midsummer-violet
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