第5話 それに僕はもうフリーランスですよ

 考え事を屋上でしているとドアが開く。


「屋上は立入禁止のはずですよ。今すぐ出た方がよろしいのではないですか?」


声の方向を向くと例のマスクの人がいた。メイド服とか僕からみたらイタいだけなんだよね。浮くから近寄らないでほしい。関係者と思われたくはない。それに、今は誰とも話す気分ではないので突っぱねることにする。


「そう言うあなたこそ校内関係者以外立入禁止なはずだよ。仮面ちゃん」

「私は関係者です。貴方がこの学園に入れたのも私の成せるものがあってこそできたんです。それに仮面ちゃんなんかじゃありません。着せ替え人形(ビスクドール)です。周りはドールと呼んでいますよ。やよいさん」


唐突に自己紹介なんてしてきてちょっと引く。こいつとの会話(おしゃべり)に付き合うほど今は気分が乗らない。


「それは悪かったね、ドールちゃん。今日は帰るよ。」

僕は屋上のドアを開けようとした時声がした


「お待ちください。話はまだ途中です、終わってません。」

静かな声だけど怒っているように聞こえた。無視してもいいのだろうが後か先かの違いを考えたら先の方がいいと思い止まることにする。


「はぁ。聞きたいことは何?」多分ドールちゃんには機嫌が悪いように聞こえるだろう。

「2年前のあの依頼です。貴方は依頼を失敗するようなほど腕はないはずですが、フランシェス卿をなぜ野放しにしたんですか。」


屋上には自販機が設置していたため五百円を入れ微糖コーヒーとオレンジジュースを買った。ベンチがあったため腰をかけドールちゃんに隣に座るよう指図するようにベンチを軽く2度叩いた。ドールちゃんは僕の隣に座ったのでオレンジジュースをドールちゃんに渡した。


「それは本件とはなんも関係がないから答える義理はないけれど、しいていうなら約束です。」

「では、椎名さんを殺せと上から言われたら約束と組織。貴方はどうするんですか?」

ギュッとオレンジ握りしめ強い意志を感じた。上手くかわさないといけないがふと思い出してしまう。


「約束だよ。私のそばから離れず守ってくれるって。一生私を見ててね弥生」

2年前の飛行機事故。僕と椎名は運良く生き延び無人島に遭難した夜の出来事の一幕。


組織と約束どっちを取るか、それは楽しい方に決まってる。

「僕は僕の心情に従って生きることに決めてね。僕は楽しい方にかけるよ。それにね、僕はもうフリーランスだから。もし生かした方が楽しいなら約束を取るよ。」

「それが貴方の答えというなら、後悔しても知りませんよ。やよいさん」


ビスクドールはベンチから降り出口へ向かう。

「飲み物ごちそうさまでした。さようなら雨流やよいさん。幸運を」

ビスクドールは屋上から」出て行った。

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元殺し屋さん、高校生になりたいそうです。 東雲アリス @sb030406

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