第4話 忘れるわけないだろバカ

 昼御飯の時間になり、皆一同弁当を出す。転校生が珍しいのか僕に4〜5人集まった。


「いやー。普段昼御飯食べないから持ってきてないんだよねー。アハハー。だから気にせずみんなで食べてきてよ!」


適当にあしらうならこんな感じで多分大丈夫なはず。

弁当のおかずをもらう乞食なようなことは僕だってしない

授業だけ爆睡していた椎名も起きた。財布を持ち、教室から出ようとしたので声をかける


「どこ行くの?」


椎名は不審者を怪しむかのように睨みながら


「誰だよお前。こんなやつうちにいたか?」


首を傾けながら椎名は疑問を投げかけた。

「バカお前今日から転校してきた綾瀬君だよ!寝てるからわかんなくなるんだドアホ!」


椎名に突っ込む生徒がいることに助かった。僕は念の為自己紹介をする。


「今日から転校してきた綾瀬です。綾瀬翼です。綾鷹の綾に早瀬の瀬で綾瀬。翼は銀翼の翼とか比翼の翼で翼。よろしく」


椎名に握手を求めるように手を出したが返ってくることはなく一言「よろしく」だけ言って出て行った。

 袋を持ち帰ってきたしいな。その中にあるパンを食べまた寝た。

 午後の授業も問題なく進んだ。一応それなりに勉学は励んだかいはあったようなもんだ。

椎名の様子を見る。椎名は授業に参加する気はなく、机で寝ていた。僕の知ってる彼女の姿はもう写っていないので重ねないようにしないといけないね。放課後になり帰りの支度をしようとするとクラスの人が聞く


「そういえば綾瀬君って部活入るの?」

「ブカツ?」

「この学校って以外に部活に力が入ってるからどっかしらの部活に入部するのかなってきになったんだよね。」


もらった資料にも多彩な部活があるのが特色と記載があったが社会人たるもの仕事はおろそかにしたくない為断る。


「そーなんだー。でもごめん!バイトとかあるから入れないんだよねーごめんね!」


やんわり断ることにした。それ以上特に聞くことなく

「バイト頑張ってね!じゃあ私部活だから」とだけいって

そそくさ出ていった。


 椎名明日香は放課後になっても起きない為肩を少し叩いて起こすことにする


「椎名さーん?もう放課後だよー。おきなくていいんですかー?」

 

 手を振り払い僕を無視した。もう1回起こす

「あのー。先生から伝言であなたに僕の学校案内してほしいんですけど」


 また僕の手を振り払った。が彼女はムクリと起きだした


 「うっせーな。何度も言ってんだろ、私は私の起きたいときに…あんたか。えーとあやえーっとあやー…綾小路」

「きみまろちゃうわボケ」


思わず反射的にツッコんでしまった。咳払いをし改めて自己紹介をする。

 「失礼。綾瀬だよ。綾瀬翼」


覚えてもらうために再度名前をいう僕。

 

「あーそうそう。綾瀬。あんたは馴染みがないかもしれないけど私は迎えが来るの起こさなくて結構だ」

「それでも起きてないと授業ついていけなくなるよ?」

「私は転科したんだよ。スポーツ科からね。スポーツ科は授業なんてほとんどないもんだから今更遅いってわけ。これでいい?」

「それでも」

「それでもなんてないんだ。雨龍弥生」


あれれ。バレるの早くね?詰んだ!!!

誤魔化すしかないよね。これ。早速クビとか生活費が

家賃とか学費とか考えたらまずいので誤魔化すしかない

僕が色々考える間に彼女は僕にビンタし抱きついてきた。


「忘れるわけないだろ。バカ!2年。私がこの2年どんな思いしたか!!心配だったんだよ。」


あの依頼の背景は彼女は知らなくていい。僕が勝手に負い目を感じ椎名…いやセリア・シルフィエット(しいなあすか)から逃げたんだから。繕うことはせず直球で聞いた


「いつ分かったの?リアは」


リアとはセリアと2人きりのときに呼ぶ2人だけのあだ名。2人しかいない教室だから僕は呼び方を変えた。セリアは僕の質問に答えた。


「襟足の髪は灰色のまま。カラコン入れてないんだからリューのサファイアのような瞳は分かりやすい。声も変わってないんだから気づかないわけないだろ。あの1週間は私の人生に影響与えたんだ。責任取らず逃げるなんて私は許しはない」


僕に抱きつき離そうとしない彼女を突き飛ばし距離をとる。

 

「今は話すわけには行かない。ごめん」

「そう。貴方はまたそうやって逃げるんだ?あの事故の時みたい」

「そうじゃない!!そうじゃないんだリア。今はまだ言えない!けど逃げてはいない。虫の良い話かもしれないけど僕が雨竜弥生である事は黙ってて欲しい。」

「それは誰の為?」

「僕に借りを作る事で得するのはリアだよ」

セリアはニコッと笑い

「そう。それならお爺様にも内緒にしといてあげる。休憩がてら屋上に行きな?自販機で飲み物買って涼むといいよ」

弱みを作らす事でセリアが優位である事を分からせる。側にいるには都合がいい為だからね。

僕は屋上の立入禁止と書いてあった張り紙を捨て鍵を壊して涼むことにした

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