第3話 雪が降るときに限って貴方が現れるのはずるい

追い出した後携帯がなっていた。表示名は市ノ瀬鈴愛の為すぐに出た。


「そう言えば始まりはなんだったか聞き忘れてね。椎名ちゃんとの出会いは何だったのかな?」


冷やかしなら切りたいなー。今更隠すことでもないし伝える事にした。


「僕は一切彼女に手を出してないし、ましてや許嫁にされる理由もないけど、2年前のフランシェス卿の一件だよ。オーストリアに行く為の飛行機で起きた墜落事故。その隣に座っていたのが椎名明日香ってわけ。愛と依存の意味を知らないちょっとお勉強の足りないお嬢様だよ。暫く連絡が途絶えた時期があったでしょ?鈴愛。あの時期だよ。」

「なるほどね、愛と依存は反対にあるようですぐ近くにある。なんとか上には誤魔化せそうだよ。君が私情を挟んでこの依頼を受けたんじゃないか勘ぐってるやつもいるからね。」


煙草を吸う音が聞こえるので一服しながら電話してきたんだろう。暇人め。


「でもそれだけの為に電話してきたんじゃないんでしょ?煙草の付き合いの為に電話するような寂しっ娘でもないじゃない?」

「あぁ。笑わないで聞いてほしいんだが、私も通うと言っただろ。まぁうん。君の先輩として制服を着ることになったからな。」

「そ、そうなんだ。20歳の鈴愛が制服をね。ウ、ウン」


駄目だ。思わず笑みが零れそうになるが我慢しないと


「恥ずかしいからその言いたくなかったんだ!だから私を見てもその笑わないでくれよ?やよい。流石に傷つく。」

「ガ、ガンバルヨー。ジャアアシタモハヤイカラキルネー」


すぐに電話を切った。これ以上鈴愛(あれ)と話してたら腹筋が割れるくらい笑う自信がある。


翌朝7時には目を覚まし、学校に行く。

雪が降っているが道路は凍結しておらず比較的まだ歩きやすい方だった。バスで行く事も考えたがアイツに出くわしたらすべてがオジャンの為そうはしない。

賢い子は歩くのです!

 

8時20分僕は学校に到着した。生徒が昇降口に入り自分のクラスへと入っていく。僕も一緒に入り校内案内図を確認し職員室を覚えた。昇降口ではなにやら噂話をしていたが

気に留めず職員室へ向かった。

職員室のドアの前で止まり3回ノックをする。


「失礼します。」


15℃の角度で頭を下げる入室をする。作法は覚えておくに越したことはないよね!


「今日から転校することになりました。綾瀬翼です。」


声は張り遠くの先生にも聞こえる声で話す。

目の前にいた先生が対応をしてくれた。

組織のくれた偽名で挨拶をする。本名がバレてしまっては元も子もないからだ。


「あやせつばさ、つばさ。あぁー。今日から転校の。担任は窓際の金髪の先生のところまで行ってくれる?」

「かしこまでーす。」


と普通の挨拶で返してしまったが気にすることはない。とりあえずその先生のとこまで行く。

爆睡してるのか分からないが机の上で死んでいた。


「あのー。」

「あぁー。書類なら後で出すのでとりあえず寝かしてください。10分……で目がしゃめましゅ」


何だこの威厳のないダメ女。寝癖は放置・

職務中に爆睡・こいつほんとに教師か


「同僚じゃありません!転校した生徒です。」


バコン!と大きい音を立て起きる。


「すみませんでした!私2-4担任平沼橋紗織!(ひらぬまはしさおり)担当科目は日本史!!24歳独身!よろしくお願いします」


目の前に大きく腫れたあざを残し挨拶をした。

声はでかいがバカだ


「貴方が独身かなんて然程興味がわきませんがよろしくお願いします。綾瀬翼です。」

「綾瀬くんね!話は聞いてるよ。大変なんだね!3-1のお姉ちゃん綾瀬心花(あやせこのは)さんと二人だけだって。あぁもうすぐ朝礼だからクラスに行こっか」


ダメ女は席を立ちクラスへ向かう。

誰だ心花なんて知らない!分からない。

心当たりがあるなら鈴愛かな?

制服を着ると言っていたからね。

10代を過ぎた女の子の制服姿とか笑う以外できない。駄目だ想像しただけで笑う。


 3Fまで上がり2−4の前についた。後ろから走ってくる生徒の音が聞こえた。


「つーばーさー!会いたかったよー!!!!」


鈴愛は抱きついてくるがそのでっかい胸に殺されそうだから勘弁してほしい。

離してほしい。


「私とお前は姉弟設定だ。付き合え」


それに柔軟になり答える


「姉さん!やめぇ!!離せぇー!!!!」


誰の趣味か知らないけど鈴愛(駄目女)との姉弟ロールプレイとか1つも特もないから勘弁願いたい。


「何言ってんのー。久しぶりの再会なんだから抱擁して感触を確かめないと」

「そーいうのは公共の場でやるのが嫌だって言ってんの!」

「うんうん。感動の再会っていいよね。先生も嬉しいよ。」


うーん。この教師は使えない!駄目だ!!


「つまり、家に帰ってなら?」

「許す。」


yesかはいか許可するしかなさそうなので適当返事をした。


「さて、お姉さんも自分の教室へ帰りなさい。一応朝礼なんですから。」

「はーい。」


鈴愛も今日から潜入のはずだが教師は元からいたかのような対応をした。


「翼くんは先生が入って!と言ったら入ってね。」

「ういっす」

「返事はういじゃなくてはい!ね?」

「ういっす」

「もぅ!!じゃあ少し待っててね」


そして先生は入った。

暇なのでクラス内に耳を傾けてみた


「さおりちゃーん。またねぼー?」

「しっかりしてよーさおりちゃーん」

「さおり先生です!!もぅ!!」


怒ったときにはもぅ!!が口癖らしい

駄目教師というかドジ教師に変えておこ。

それも愛らしく感じるのか生徒には慕われてるのが見えた


「はい。じゃーいない人は手を上げて!いないので続けます。今日は転校生いるから紹介します!入っておいでー」

教室が静まり返る。

その合図とともに入室をした。教卓へ進んだ。


「い゛た゛」


わざと教卓の段差でコケた。教室内は笑ってた。

窓際1番後ろには護衛対象がいた。

彼女はずっと窓を見ていた。

んー!同じクラスなんて聞いてないので勘弁してほしいのだがこうなったらノリと勢いと気合いでなんとかするしか…ないのかな?なるようになれ!!

まぁ、黒板にとっとと名前を書いて自己紹介をしよ。すぐに終わるし隣同士って言うわけはなさそうだしね!


「初めまして。本日からこの学校へ転校することになりました綾瀬です。綾瀬翼です。よろしくお願いします。」


それだけ?の空気が生まれ、ドジ教師がカバーに入った


「えっとじゃあ趣味は?」

「特にこれと言ったものはないです。」


カバー仕切れず席に案内を開始した


「まぁ、今日が初日ですから緊張してるんでしょう!じゃあ綾瀬君はどの席にー」

「先生!!しーちゃんの隣が空いてます!!」


おいバカ。そこだけは勘弁してほしい

「ありがとー。じゃあ1番後ろの窓際の女の子の隣に座ってね」


拒否権はない為大人しく席に向かう。あの時と違い濃紺色の強い髪色に長髪とだいぶ印象が違う。

そんな彼女と一瞬目が合うが気にせず席に座る。


「はい!今日から頑張ろー!!!連絡事項はないからみんな後はよろしくねー!」


ドジ教師は出て行き、回りに人が囲む。

「ねぇねぇ前までどこにいたの?」

「なんで転校したの?」

「お姉さんこの学校いるの?」


うーん。質問攻めが酷い

椎名明日香は1言

「うっさい!遠慮くらい覚えたらどうなんだ!寝やしないよ。」


周りを叱り机に突っ伏して寝た。ただ僕を捉えた目は大きく開いたのを見逃さなかった。

外野は退散していった

雪の降る季節また君に再会するとは僕も思わなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る