置いてますか?

闇雲ねね

置いてますか?

「あのぉ~。ここに椅子置いてますか?」

「当店に椅子はございません。」

「あのぉ~。鶏肉ありますか?できれば胸肉がいいんですけど。」

「当店には胸肉も鶏肉もございません!」

 佐々木はうんざりした。この狭い店内で何故有り無しを聞くのか、と。見渡せば大体分かるだろ、と。

「あのぉ~。カエルありますかぁ?」

「当店に生き物はございません。」

「あのぉ~。サイコガン、探してるんですけど。」

「サイコガンは置いてございません!」

 佐々木の目は血走っていた。サイこがンが欲しいのは佐々木のほうだった。

「あのぉ~。お刺身ありま」

 その瞬間。佐々木の頭は活火山と化した。脳内のマグマが頭頂部の皮膚を突き破り、続けて天井をも打壊した。

「うおおおおおおおお!!!!」

 佐々木は止めどなくマグマを噴射し、この駅の構内は爆温の脳汁であふれた。阿鼻叫喚の人々。その喧騒の中心に御座します佐々木。座禅を組み三角を形づくるさまは紛うことなき火山であった。

「キオスクには、ございませえええん!!!」

 そうしてキオスクだったその場所は佐々木山となった。いつまた怒りだすか分からないため、駅の周辺には人が寄りつかなくなった。機嫌を損ねないようにときどき親族が駅を訪れ、改札口の手前に佐々木の好物を供えている。そういえば、かつて佐々木姓だったものの、その名前は?

はて。わたくしも、記憶にございません。

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置いてますか? 闇雲ねね @nee839m

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