ホルスタイン女子高生の特別な日

愛田 猛

ホルスタイン女子の特別な日


ホルスタイン女子高生のホル美には三分以内にやらなければならないことがあった。

それは、特大の牛乳パックを頭から被って、校舎の屋上から飛び降りること。


先輩から牛乳パックを渡され、行け!と言われたホル美は、ホルスタイン柄のセーラー服に身を包み、牛乳パックを手に校舎の屋上へと駆け上がっていた。


なぜこんなことをしなければならないのか?


それは、ホル美が所属を希望する「牛乳パック被り部」の入部テストだったのだ。


牛乳パック被り部は、学園の校内で最も謎めいた部活動として知られていた。


部員は全員、牛乳パックを頭から被り、校内を駆け巡るという奇行を行う。


その目的は不明だが、噂によると「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」のような存在になることだとか。


噂の真偽は定かではないが、ホル美は、そんな牛乳パック被り部に憧れていた。

(ああ、なんだかわからないけど恰好いい!私も被って走りたい!)と夢想していたホル美は、部員に対して、何度も入部希望を訴えた。


そして、今日ついに念願の入部テストを受けることになったのだ。


テスト内容は、牛乳パックを被って校舎の屋上から飛び降りるというもの。


一見、無茶苦茶な内容だが、牛乳パック被り部にとっては重要な儀式らしい。


ホル美は深呼吸し、校舎の屋上の縁に立った。


そして、牛乳パックを頭から被った。


かすかい牛美優の匂いがするパックを被ると、視界が狭くなり、息苦しさを感じる。



それでも、ホル美は迷わなかった。


「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」になるために。


ホル美は思い切って飛び降りた。


風を切って落下するホルスタイン柄のセーラー服。



地面に激突すれば死んでしまうかもしれない。


その時突然、ホル美の体が空中で止まった。

何と、「屋上から飛び降りる時に被った牛乳パック」は、超能力の触媒として機能するのであった。

ホル美は、念動力、すなわちサイコキネシスを手に入れたのだ。


ホル美は、その日から「サイコキネシスのホル美」と呼ばれるようになり、念動力を駆使して牛乳パック被り部の中核を担うようになった。


だが、彼女の狂信的な部活への忠誠心は、周りのクラスメイトをドン引きさせるのに十分だった。


彼女の異名が「サイコパスのホル美」になったことを、ホル美自身が知ることはない。そして今日もホル美は牛乳パックをかぶり、校舎を走りまわるのだった。

(完)、




===

没作品の奇跡の復活!

ま、ほかの人も3分でバッファローを倒すだのなんだの、書いてますからね~

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホルスタイン女子高生の特別な日 愛田 猛 @takaida1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ