第3話
「今回の対象は渋谷小児病院だ。」
会議が始まると田中が口を開いた。
「この病院には入院患者と見せかけられた拉致被害者が複数名いると見られる。
表向き私立のなんてことない企業が経営している病院だが、よくよく調べてみるとその企業は要注意組織の美鈴研究所の系列だ。
素質のある子どもたちを拉致し、手元に置き、都合のいいようにあつかっているんだろう。
この事案を重要案件と判断、長らく空いていた一班班長に坂本、副班長は常磐と体制を整えた上で臨むことにした。
坂本、あとは頼んだぞ。」
そうして続きを坂本に任せると、田中はさっさと部屋を出ていき、そのままカツカツとどこかへ歩いていった。
部屋内は少しの間静まり返る。
「…この度、一班班長となりました。
不慣れなこともあるかと思いますが、よろしくお願いします。」
坂本は軽く挨拶と会釈をして、周囲を見渡す。
ほんの少し、班員から張り詰めた空気が醸し出される中で、大して気にせず話を続ける。
「早速作戦内容ですが……」
…………
会議終了後、資料を見直しながら1人部屋に残っていた坂本に常磐が声をかけた。
「坂本。」
坂本は気づいて顔をあげる。
「俺はお前の実力を認めてるし、尊敬もしてる。
一班はこれまで班長代理で俺が仕切ってきたからやりづらいこともあるかもしれないが、頑張れよ。
副班長として、お前をしっかり支えてやるから。」
常磐の顔をじっとみて話を聞き、そしてふっと少し微笑んだ。
「ありがとうございます。
これからよろしくお願いします。」
坂本は座っていた椅子から立ち上がり、右手を差し出す。
常磐はその手をとって、2人はしっかりと握手をした。
風と桜 ヨシザワ @gentou090131
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