実録ウルジョラマンの裏の世界(KAC20241作品)

さんが(三可)

実録ウルジョラマンの裏の世界(第一弾)

 戦闘以外にも人型変身巨大化英雄ウルジョラマンには三分以内にやらなければならないことがあった。


「ホント、やってらんないよ。昔はね、良かったの。そりゃあ、多少の怪我は当たり前よ。でも、そっちの方が生きやすいってもんさ」


 取材班に向かって話を始めたのは、ウルジョラジロウ(仮名)56歳。顔出しNGで、写真に出せるのは胸から下のみ。ゴツゴツとした手には、無数の傷痕がある。


「いやね。昔の三分間ってのは、戦ってるだけだったのよ。それだけを考えてればいいの。今じゃあ、やることも盛りだくさんよ」


「えっ、戦い以外にも仕事があるんですか?」


「当たりめーよ。カラータイマーって、知ってるだろ」


「はい、三分の活動限界を知らせてくれる胸のタイマーですよね」


「あれな、自分でスイッチ押してるんだ。タイムカードみたいなもんよ」


 巨大化したウルジョラマンの最初の仕事は、カラータイマーと呼ばれる、タイムカードを押すことから始まる。

 巨大怪獣との戦い。ウルジョラマンになった時には、高額の戦闘手当てが発生する。コンマ1秒でも、数万円になる手当て。だから、変身時間は厳正に記録されている。


「ここ見てみろよ。少し膨らみがあんだろ」


 ジロウが取り出した写真には、カラータイマーの横には小さな膨らみがる。


「もしかして、これが!」


「そうだよ、カラータイマーのスイッチさ。それでな、ここからが面倒臭いのよ」


 カラータイマーのスイッチを入れて、本部へと変身完了のメールを送る。昔は、カラータイマーと連動して変身完了のメールが自動送信されていた。

 しかし、度重なる戦闘でカラータイマーの作動不良が発生し、メールが送信出来ていない事態が度々起こってしまう。


 重大インシデントに認定され、それからウルジョラマン自らがメールを送らなければならなくなった。


「要領のいい奴はな、変身最中にメールを送ってるんだ。それで、少しでも戦闘時間を長くしてるのよ」


「そんな事して問題にならないんですか?」


「俺達のしてることなんて、ちっぽけなもんよ。ここからが本題なんだからな」


「もっと酷いことが行われていると言いたいんですね」


「ああっ、俺達はな怪獣と戦う前にサムネ撮ってんだよ」


「はっ、戦っているんですよね? そんなことあり得ないでしょ」


「あのな、誰にだって知られたくない秘密の1つや2つはある。秘密がなけりゃ、作り出してやればイイ。科学捜査本部なら何だって出来るさ」


「科学捜査本部と怪獣が繋がってるてこと……ですか?」


「そうに決まってるだろ。プロレスだよ、プロレス」


 そしてウルジョラジロウから語られた、科学捜査本部の事実には驚愕するしかなかった。


 ウルジョラマンと怪獣との戦闘は、動画投稿されている。戦闘時間だけを見れば二分三十秒程。しかし、どの動画もカラータイマーは鳴っている。カラータイマーは二十秒前から鳴り出すので、どの動画でも三分ギリギリまで戦っている。


「でも、編集すれば時間は短く出来るじゃないですか? 流石にこれだけでは、科学捜査本部の不正の証とはならないですよ。面白い話ではあるかもしれませんが」


「じゃあ、これを見てみろよ」


 次にジロウが見せたのは給料明細。それには、戦闘手当ての項目に時間が記載されている。どの戦いも戦闘時間は二分三十秒ほど。


「科学捜査本部はな、三分で経費を申告している。でも、俺達に支払われているのは二分三十秒。なあ、三十秒分が消えてるんだよ!」




次号第二弾、科学特捜本部と大物政治家の癒着に続く

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