第5話
そのニュースが私の耳に
飛び込んで来たのは、家でボーッとニュースを見ていた時だった。
『栃木県那須にある殺生石が割れているのが観光客によって発見され····』
殺生石が割れた?!あの玉藻の前を封じていた殺生石が?
私は急いでスマホを取り出した。退治したのは安倍泰成、安倍晴明の子孫にあたるようだ。退治といっても呪術で追い詰め、最終的には上総介なんとかとかいう武人が退治したと書いてある。退治といっても追い詰められた玉藻の前が石に変化して閉じ込められたわけだから、ご臨終はしてないわけだ。
これはおもしろ···いやいや、大変なことだ。石が割れたということは玉藻の前が復活するかもしれないのだから。
玉藻の前···伝説の九尾の狐で麗しい美女に姿を変え、時の権力者『鳥羽上皇』に取り入って、思いのままに操った、とウィキペディアに書いてあった。
鳥羽上皇の時代には私はもうあの世だったから、玉藻の前に会ったことはない。しかし九尾の狐の伝承はそれとなく昔からあったのだ。
それが千年以上の時を経て復活。これはもうワクワクものだ!
「あんた、さっきからテレビを食い入るように見て、今度はニヤニヤしてるし、大丈夫?」
母親が心配そうに私を見ている。
仕方ないではないか!あの伝説の狐ともしかしたら一戦交えて、上手くいけば眷属に。そこまでは無理でも軽い友情とか生まれたりしないかな?
もう想像するだけで顔が緩んでしまうのだ。
さて、どうやって玉藻の前を誘い出すか、私の頭はもうそのことで一杯になっている。
そんな私のニヤニヤ顔を見つめる式神たちが『またろくでもない事考えてるな···。』と溜め息をついていることに私は気づいていなかった。
私が最強の陰陽師だが、それは秘密にしている 都城 文月 @yoshicollet
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