アニメ『モンスターデストロイ』(KAC20241)
つとむュー
アニメ『モンスターデストロイ』
それはアニメ制作。
監督として名が売れ始めた水鳥に、ショートアニメの依頼が飛び込んでくる。その長さは三分だった。
「とにかくモンスターをやっつける話にしようぜ!」
水鳥はスタッフに向かって提案する。
完成したアニメは、深夜に流されるという。飲料水などを扱っているメーカーがスポンサーの枠で。
日常や仕事の疲れを忘れさせるようなスカッとした内容で、明日への元気をもらえるアニメにして欲しいというのがスポンサーの要望である。
三分という長さでは、心の機微を描く細やかなストーリーを構成する時間的余裕はない。ビジュアルのみで訴えるざっくりと分かりやすい内容で十分なのだ。
「まず第一回は、チェーンソーでモンスターをなぎ倒す展開がいいな」
なんでも水鳥は、回を増すごとにどんどん派手にしたいらしい。
チェーンソーでモンスターを打ち負かした美少女は、だんだんと強くて大きな武器を手にしていく。
「次は機関銃、対戦車ミサイル、レールガン、搭乗型ロボット、そして変形する戦闘機。なんだか楽しくなってきたぞ!」
いつも仕事が遅いことで有名な水鳥だったが、翌週には最終回までの絵コンテを仕上げてきた。彼がこれだけ夢中になるのも珍しい。
まあ、三分アニメだから、十二話作ったとしても二十分アニメの二話分なんだけど。
得意顔でスタッフにかざした絵コンテの表紙には、『モンスターデストロイ』と書かれている。
早速回覧を始めたスタッフは、誰もがラストで目を丸くした。
「ええっ、最終回はこれでいいんですか?」
美少女が扱う武器はだんだんと巨大化していく。
だから最終回は、宇宙船クラスのなにかで地球上のモンスターを完全に駆逐するものだと思っていた。
しかし絵コンテに描かれていたのは、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ。
「これでいいんだよ。だってスポンサーのマスコットは、赤い雄牛じゃないか」
アニメ『モンスターデストロイ』(KAC20241) つとむュー @tsutomyu
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