研究者との話

@kenta12345

第1話 プロローグ

「私に付いてきたまえ」


 教室で、先輩はそんなことを言ってきた。

 僕は、


「………嫌で——あ、あああああ」

「早くするんだ。これは世紀の大発明だよ」


 先輩から伸びた無数のマジックハンドみたいな手と、電流。

 僕は為すすべもなく、先輩に捕まる。

 連れてこられたのは、実験室。

 いつもの場所だ。


「……先輩、マジックハンドはまだいいです。電流は無しにしませんか?」

「何を言っているんだ。そうでもしないと、君、逃げるじゃないか」

 流石先輩だ。よく分かってらっしゃる。

 実験室は怪しい液体と、巨大な機械。それと、沢山のゴーレムが居た。

 僕は先輩に、

「……それで、今度は何を作ったんですか?」

「ふふふっ、聞いて驚け」

 そう言うと、先輩は、

「じゃじゃーんっ! 翻訳飲料だ!」

「うわーすごーい、逃げろ!」

 

 捕まった。


「……飲まないですよ? そんな、見るからに怪しい液体」

「怪しいとは何だ。私の発明は王国の発展に関わるのだぞ。ほらっ、早く」

 背中から伸びた手が、ピンク色の液体を掴んで僕の口に押し付ける。

 ほんと、泣きそう。

 僕は仕方なく、いつもの通り、液体を喉に入れた。

 すると、

「先輩⁉ 何だか体が発光してきたんですけど‼」

「失敗だな! よし、後は頑張れ!」


 そう言って、先輩は窓から飛び降りた。

 いつものことだ。こうなったら、後のことは分かる。

 僕はせめてもの防御魔法で、胃を覆った。


                   ☆


「——ごめんよ。今回は成功すると思ったんだけど」


 アフロになった僕に、先輩はそんなことを言ってきた。

 謝るなら僕を使わないでほしい。先輩には罪悪感はあるのかな。

 先輩は、

「やっぱり陽彩君で試してみて良かったね。ゴーレムだったら壊れていたかもしれない」

「ゴーレムでいいならゴーレムで試してくださいよ‼」

 先輩は、僕の防御魔法の硬さを知っているから、僕に無慈悲だ。

 さっきは体内の防御には成功したけど、何故か外側でも連鎖して爆発した。

 死ぬかと思った。

「でも、君は耐えているじゃないか。私はね、流石に危ないと思ったものは君に渡していないんだよ? 君も大切な僕のパートナーだ。壊すわけにはいかない」

「パートナー辞めさせてください」

 先輩は無視してきた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

研究者との話 @kenta12345

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る