亀には三分以内にやらなければならないことがあった。

K.night

第1話 亀には三分以内にやらなければならないことがあった

亀の儂には三分以内にやらなければならないことがあった。


「ぬおおおおおおおおおお!」


火を噴け、儂のカメノテ!


三分以内にやらなければならないこと。


それは、甲羅に背負っている浦島太郎を陸上にあげることである。


「マジでふざけんな、この若造が!


来る時は30分も深水できた漁師のくせに、竜宮城へ来てみれば、飲めや歌えやで30kgオーバーしやがって!


しかも乙姫のやろう、何が土産だ。こちとら300歳オーバーだぞ。考えろ、耐重ってものを!」


「だのんだおぼえばない!」


あ、やば、声に出てました?


「しゃべりなさんな!大切な酸素が!」


「ガボガボガボ。」


あ、3分もないかも。このままだと死体を運ぶだけかも。その方が浮いてくれるかしら。


「じぬ。」


死ね。違います違います。運びますとも。業務命令ですから。だけどもうカメノテ引きちぎれそう。取れてどっかでおいしくいただかれちゃいそう。


なにこれもう、いじめられてる方がましだったのに。あんなの手足引っ込めていれば悪ガキに手出しされませんのに。


あ、待って、手だけは何とか儂の亀の甲、捕まえててもらっていいですか?え、直上昇するな水圧が!って言いたい気分ですか。知ったもんですか。直上昇の最短距離爆走しないと持たないでしょうあんた。


「がぼがぼがぼ。」


何?何言ってんの?ってかもう何も言わないで。大切にして?酸素。



あれ、なんか白い煙みたいなのが上がってきたな。まさか竜宮城燃えました?ないか。ここ水中だもん。


「あ!あんた!玉手箱開けやがりました!?」


「がががが!」


ふざけんな、勝手に人の亀の甲の上でエンディング迎えてんじゃないよ!ないんだよ!そこに酸素!あるの貴方が竜宮城で過ごしたお時間圧縮分なの!


「じぬ!じぬー!!」


「着く!あとちょっとだから!」


光!見えてきましたよ、深度200mからしか見れない光が!!


「うおおおおおおお!」


儂は最後の力を振り絞り水中から顔を出した。


「大丈夫ですか!?」


主に、命と首。


「ぜえ、ぜえ、ぜえ。」


「っしゃあ!生きてた!」


浦島太郎は呼吸を整えながら水面に映る自分を確認していた。


ってか、着いたからさっさと降りてほしい。止めて?人の甲羅の上で甲羅干しすんの。


「なんじゃこりゃああああああ!」


「水上じゃこりゃああああああ!」


「おい、亀!今すぐ竜宮城戻せ!じじぃになってんじゃねえか!クレームだこら!」


「うるさい、こら。そんだけの時間、無銭飲食してんのじゃ。いっそ安いと思え。」


「ふざけんな、今すぐ戻せ!」


「やだね!業務命令は果たしたんで!」


俺はシュポンと水中に戻っていった。頑張れ、陸地まで20kmくらいだ。現役なら余裕で泳げただろう。



さあて、残業代稼ぐために世界1周海遊してきますかねえ~。

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亀には三分以内にやらなければならないことがあった。 K.night @hayashi-satoru

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