HITO♡HADA献身GIRL

作家:岩永桂

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秀美には三分以内にやらなければならないことがあった。

便座カバーの懐(=ふところ)温め業である。

亭主の織田信琳のために、

何時でも便座がぬっくぬく状態を保つため、

有袋類の如く、便座カバーを優しく温く抱いている。

嫁に出される時、お父様からは

「何時でもムコ殿のタマを奪って来い!」

と、短刀を渡されそうになったが

「お父様、懐炉一生分をご所望致しまする」

と、キリバイさんをスポンサーに付けたような口を聞いて、

懐炉を2tトラックごと持って帰った。

『あれ? 何か二人分の人生が交錯してない?』

って混乱してる君は歴史のことをよく解っているね。

その矛盾を噛み締めながら、続きも読んで貰えたら。

名前は秀美であってるよ。豊臣秀美。

懐炉をたくさん持っているのも秀美。


「ザ・ディープ」とか「リターン・バタフライ」っぽい女性は

パラレルワールドの住人と思って頂けたら。


んで、秀美は懐炉を腐るほど持っていたが、

最近は人肌の妙に目覚めて36.8℃をキープ出来るように

基礎体温を毎日欠かさず検温した。


実際、便座に座す信琳自体も、彼女の温いもてなしに非常に満足していた。

そういうきめ細やかな差配は、亭主関白を支えていく原動力になり得る。


信琳は本能寺SA(サービスエリア)のトイレを借りた時

余りの便座の冷たさに肝を冷やしたというエピソードを妻に語って聞かせた。

世にいう「本能寺SAの便」である。


本能寺SAに秀美の姿はなかった。

ある訳なかろう。

居たなら人肌便座に座らせたに違いない!


出張するなら秀美を同伴させようと、

心から尻意(=けつい)した織田信琳だった。


秀美には三分以内にやらなければならないことがあった。

愛する亭主の関白振りに

今日はどんなアドリブで応えてみようか?

振り返る壁掛け時計を一瞥する。

残り時間は2分34秒……

自由に、奔放に動き回る自分自身を描きながら

今日も秀美は愛する信琳を上手にもてなすのであった。

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