第15話 決着

ドゴォォォっと衝撃が走る。


ちょっと、ズレた、か...。

クソいてぇ!重すぎるだろう!


ジリジリと、力が押されている感じがする。

もう少しずらさなくては、村に到着してしまう。


焦る気持ちをおさえつけて、左手を血が流れる右腕に添える。

ぐぐっっとさらに力を加えた。


「こぉのぉっ....!!ず....れ...ろぉぉぉぉっ!!!」


咆哮を上げて、全身の力を右手に乗せた。

こうなりゃ、力比べだ。

ジリジリと動く球。


もう少しだ!と歯を食いしばっていると、


神がポンっと背中を押した。


すると、あり得ない力が出た。


そのまま、体が傾きぐるっと地面に一回転する。


唖然とする。


俺の目線の先には、青空が広がっていた。


『あ、ごめん。いやぁ、じゃんけん絡まないと力が制御できないって言ったじゃん。

やっちゃった♡』


神がテヘッと悪びれずに言う。


「このクソ神、ふざけんな...。て言うか、ボスは!!?」


ガバッと起きて、眼下を見下ろす。

すると、群れは、進路を変えて左に逸れていた。


『無事に、逸れたよ。やったね、愛し子よ。』


神が血だらけの俺の手に触れる。

暖かい力が流れてきて、皮膚と筋肉を再生していく。

あまりの衝撃で、筋肉も至る所が断裂していたようだ。

なんだか、最後は神が美味しいところをかっさらったけどまあいいか。


『さて、終わったけど、君は村に帰るのかい?』


ニヤニヤしながら聴いてくる神。

わかってるのだろう。俺の選択を。


「いや、帰らない。あそこにいたら、俺は人にはなれない。幸せになれないのがわかった。

俺は旅にそのまま出る。

じゃあな、くそ神。達者でな!」


と告げると、神はクスクスと笑った。


『なんで?私の生贄。

私から離れてどこに行くんだい??』


「だって、お前は村の神だろう?」


何を言ってるんだ。昔からそう言われてた。違うのか?


『はは。違うよ!私は、じゃんけんの神。

村の神じゃない。

強いて言うなら、あの村で生まれる愛し子のための神様だ。

だから、私も君と行くんだよ。


どこまでも、永遠に。』



「まじか....。」



この瞬間、俺の人生は神のものになった。

死ぬこともできずに、神と生涯ずっと生きることが決定した。


大変ないい笑顔で『よろしく』と言う神に、ヒクッと口角が震える。


きっと、こいつは俺しか見ない。

他の誰かなんか見ない。

俺だけの存在だ。

コレが幸せというのか、わからないが、村にいたら幸せにはなれなかった。


神がそばにずっと居るが、これから俺なりの幸せを探していこう。


きっと、そんなに悪いもんじゃないだろう。




後日談。

村には平和が訪れたが、神が帰ってこなかった。

祠に願っても神は出てきてくれない。

大事な局面では、いつも神頼みだった村は、だんだんと衰退して行った。

愛し子の俺が生きてどこかにいるため、新たな愛し子は生まれなかった。

村人たちは、あの時の生贄に与えた愛し子のことを思い出し、大変後悔したのだった。


そして、俺は、アザの力で、伝説級の冒険者になった。

その横には、いつもニヤニヤした美丈夫がいた。



おしまい。

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じゃんけんで負けた村人(俺)は、生贄にされました。 香 祐馬 @tsubametobu

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