第14話 代償

すでに、魔物の群れは到達していた。


『この群れの中心にボスがいる。よく見てごらん。この群れ、バッファロー系の魔物が多いだろう?だから、ボスはバッファローの魔物だ。

一際大きい個体が、ボスだ。』


言われてみれば、バッファロー系が、半分近く占めている。他は、鳥系だったり、虎、獅子、蛇などさまざまで多種多様だった。


遠くの方で、ブモォォと大きな咆哮をあげている個体がいる。

まだ見えないが、威圧がすごい。

多分、コレがボスだ。


俺は、そいつが来るまで練習をする。眼下にいる魔物にアザを伸ばして、巻きつけていく。確かに進行方向に向かって動く球がある。だが、個体によって色はさまざまみたいだ。

戯れに、球を突いてみると、自分の指に重い衝撃がきた。球を見てみると、動いてない。


「なるほど、大きい個体でパワーがあると、動かないのか。」


ならばと、今度は思いっきりデコピンをしてみる。

衝撃は相変わらず重かったが、できないほどじゃない。

グッと力を入れて抵抗すれば、動いた。


動かした個体が、進行方向をずらした。


すると、いきなりの方向転換に対応できない個体がいくつかいて、その場で崩れる。

ただ、興奮状態の魔物には関係ない。上からドドドと踏みつけられて行った。


なるほどっと、手をグーパーして感触を確かめ、自信をつける。


さぁ、こい。


目を凝らして、群れの先を見つめる。

あー、あれだ。とすぐわかった。

一際体が大きい。3倍はあるな...。

ツノの輝きも違う。

黒煇りしていて、威圧感がすごい。


ふーっと息を吐き出すと、祈った。


「***、力を。」


すっと右手を前に突き出し、あざをボスに向けて伸ばし始める。

ぐんぐんと伸びていき、ようやく触れた。


触れた瞬間、アザから振動がきた。

こんなの初めてだ!!まだ拘束もしていないのに、次元が違う。


一瞬、アザをとおざける。


深呼吸をすると仕切り直して、拘束する。今度は、ちゃんと心づもりしていたから、大丈夫だった。


ぐんっと来る威圧に耐えながら、アザを全身に巻き付けていく。


すごい大きさと輝きの球だった...。

全ての球の主張がすごい。

どれもコレも高速で震えている。

命の力強さが、桁違いだ。


思わずブルッと体が震えた。

武者震いというやつだろうか...


ただ、コレだけはっきりしてると、進行方向の球ははっきりわかった。


黒い大きな刺々しい球だ。


気合を入れて、指を弾く。


ず、れ、ろっ!!


パンと、指に抵抗が来た。


「痛っえーーーー!!」


見ると、指が変な方向に曲がっていた。

棘に刺さった感じがしたが、指に穴が開き、血が流れていた。


「...まじか...、俺の体に影響するのかよ...。」


グッと食いしばり、痛みに耐える。


すぐさま神が俺の指に触れて、治癒して事なきを得たが、コレでわかった。

あれを止めるのは、無理だ。

俺の体が弾ける。


いまだに、拘束のアザは外れていない。

意識を完全には解いてなかったから、そのままボスを見据える。


気合をいれなくては、多分無理だ。


右足を後ろに引き、腰を落として構える。

突き出す手は、グーだ。


行くぞ...


体重を乗せて、渾身の力で黒い球をパンチした。



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