第13話 力の使い方

そんなふうに話をしていたら、地響きが聞こえてきた。

スタンピードがすぐそばまで近づいてきていたようだ。


『さぁ、そのアザの使い方を教えよう。

ただ、祈ればいい。私の名前を呼んで、力を貸してって言えばいいんだ。


私の名前は、【***】だ。』


名前を聞き取ることは出来なかった。

ただ、その名前を教えられた瞬間、脳に焼き付くような痛みを感じた。


『私の名前は、愛し子以外に知られるわけにはいかない。ただ、今この瞬間誰かが聴いていても、人間には私の名前を理解することはできない。言葉として理解できないからね。』


じゃあ、やってみようと神が言うので、俺は祈った。


「***、力を俺に貸してくれ。」


胸に拳を当てて、目を瞑り祈った。


すると、体の中から力がみなぎってきた。

驚き目を開くと、右腕のあざが光り輝きながら浮かんでいた。


『そう、それをまずは頭上高く伸ばすイメージを作って...、うん。上手だ。』


すーっと、唐草模様のアザがぼうっと光りながら伸びていく。

止まれとイメージすると、長いままアザが止まった。


『そこにウサギがいるだろう。あのうさぎの体に、巻きつけてみようか。』


神が言う方向に目をやると、そこには茶色の野うさぎが1匹いた。

指示通り巻きつけると、俺の頭に色んな色の球が、映像のように現れた。


『一番大きい色の球が、そのうさぎの心臓部こころだ。もし、コレを殺そうとするなら、この球を握り締めれば死ぬ。今はしないでね。

その球の中に、動いてる球がいくつかあるだろう?今、口を動かしてるから、そのリズムに合わせて動いてる球は、口の制御をしている。わかる?」


小さい赤い球が、モグモグしているタイミングに合わせて揺れている。

コレだろう。


『じゃあ、今からあのウサギに私が触れて動かしてみよう。そうすると、足の動きに合わせて動く球があるから、それを見つけて掴んでみようか。』


神がふらっとウサギに近づき、お尻をチョンと刺激した。

ピクッと動いたウサギは、前にぴょんと跳ねながら進んだ。

その時に、一層輝きを増して進行方向に動いた黄色い球があった。

コレが、そうだろう。


手を前に突き出して、黄色い球を掴むイメージをする。


すると、ウサギの動きがツンのめって止まった。


『いいね。成功だ!

君はセンスがいい。いいね、いいね。

コレは、小さいしパワーがないから、動きを止めても君の体の負担にはならないけど、今から現れるボスは別だ。いいかい、間違っても止めようと思っちゃダメだ。

じゃあ、練習だ。今度は、その球をずらすイメージで進行方向を変えてみようか。』


一度、黄色の球の拘束を解く。

再び動き出した球に、右にうごくようデコピンをしてみた。


ピンっ!


すると、黄色い球は右斜にずれて動き出した。

見ると、ウサギも右斜に進路をずらしていた。


『成功だね。』


じゃあ、本番だ。と神が言い、崖下を覗き込んだ。



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