[KAC]01カップラーメン戦士

本埜 詩織

第1話

 その戦士には三分以内にやらなければならないことがあった。

 故郷を離れ都会の街へ、しかしあろう事かだからといって大自然の脅威からは逃れることもできなかったのだ。

 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが、もう眼前に迫っている。

 そう、日清カップヌードルにお湯を入れてしまったというのにだ。

 戦士はそのバッファローの群れを殲滅しない限りカップ麺という人生初めての経験を台無しにされる。三分を過ぎてもだ。

「流石だNISSHIN! ネオマサイ族出身、戦士の私にこのような試練を与えるとは!」

 説明しよう、ネオマサイ族とはニュージーランドっぽいどこかとアフリカっぽいどこかが混ざったような不思議時空の戦士民族である。

 戦士は不敵な笑みを浮かべた。

 逃げ惑う街の人たちとは真逆の方向へと突き進む。

「私も戦士だ! 受けてたとう! NISSHIN!」

 戦士はバッファローの群れなど歯牙にもかけていなかった。自分の勝利を一瞬も疑っていなかった。

「う、うわああああ! 数が数が多すぎるううう!」

 駐屯する警察はアサルトライフルを連射するが、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが……大地を飲み込む津波のような群れが数を減らす様子はなかった。

「ふむ、都会ではそのように石を投げるのか! すまないがネオマサイではこうだ!」

 警察の横に戦士が並ぶと、地面を一掴み。そしてそれを無造作に投げ放った。

 投げられた小石や砂は警察たちの放つ銃弾を追い抜き、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れに着弾する。砂粒一つがアサルトライフルに匹敵する、そして混ざった小石はアンチマテリアルライフルにすら匹敵した。

「あ、アホなーーー!」

 その光景に見ていた警察は思わず発泡を止めた。

「往くぞ都会の人! 大丈夫だ! ネオマサイが味方だ! オラオラオラオラ!」

 戦士はじめんから砂や石を握るとそれを無造作に放り投げ続ける。まるで軍隊の一斉掃射だ。

「わ、ワンマン……アーミー……」

 それはまるでたったひとりきりの軍隊だった。

 そして、三分後男は全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れだったものの死骸の上でカップ麺を掲げていた。

「onlyyou! 私は勝ったぞNISSHIN!」

 後に、日清カップヌードルのCMに起用される歴史的瞬間であった。

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