エピローグ
「うっわー、快晴! 清々しい!」
腰まであった長い髪を、肩で切り揃えた例が、王都の北門を出てから大きく腕を伸ばした。
「うん、事件も解決したから、より一層清々しいね」
髪を肩までばっさりと切ったレイは「なんか軽くなった」と笑っていたが、それを見たメロディがショックを受けて硬直してしまった昨夜。
私たちは二週間の休暇を、のんびりと過ごすことに決めた。
王都から少し離れた場所にある温泉の観光地に行くことを決め、早朝から北門を出て目的地へ向かう。
「それじゃあ、ゆっくり温泉を楽しむとするか!」
「うん、いろいろお土産を買いたいね」
ギルドメンバーたちの喜ぶ顔を想像して、ふふっと表情を綻ばせると、レイはぽんぽんと私の肩を叩いた。
「それはあとで選べる。問題はどの温泉から制覇するか、だろー?」
「どれだけ温泉に入るつもりなの、レイ。のぼせないでよ」
「そこは気をつけるけど。温泉に浸かってのんびりする、なんてなかなかできないからな、冒険者しているとさ。だから、チャンスは逃さないようにしないと!」
もしかして、レイって結構温泉好きなのかな? と考えていると、彼が歩き出す。
早朝の爽やかな空気の中、いろいろな人たちが王都から別の村や町へと旅立っていく。私も一歩、足を踏み出した。
レイの隣に立ち、彼を見る。きっと腕の良い人に頼んだのだろう。腰まであった長い髪から肩までの長さになったが、彼の髪はつやつやとしていて、いつもよりもきれいに見えた。
どうやら、レイの髪を切り揃えた人が丁寧にケアをしてくれたみたい。
「しっかし、世の中にはいろんな人がいるんだなぁ」
「……本当にね」
王都にはいろんな人が集まるから、私たちが知らない世界はもっとあるのかもしれないなぁ……なんて考えながらも、空を見上げる。快晴の空に、太陽が輝いていた。
まるで初めてレイに会った日のように。
「とりあえず、温泉と美味いもんは外せないよな」
「なんせ休暇だしね。ずっと依頼をこなしてきたから、まとまった休暇って不思議な気がする」
「だよなぁ。『カリマ』に所属しているパーティー三組しかいないのに、よく依頼が途切れないよなぁ」
しみじみと呟くレイに、私もうなずいた。それだけ私たちのギルドの評判が良い……ということなのかもしれない。むしろ、そう思いたい。
「でも今日から休暇! しっかり休みを楽しんで、また依頼をこなそうぜ」
「そうだね、私たちを頼ってくれる依頼人もいるのだから、しっかりしないとね。……ゆっくり休んでから」
「だな!」
ぱっと明るく笑うレイの姿は、やっぱり太陽みたいに輝いていた。
レイと肩を並べて、目的地へ向かう。
こんな時間がずっと続きますように――そう、願った。
―Fin―
【完結】冒険者ギルド『カリマ』に所属している聖騎士は、今日も明るい相棒に振り回される。 秋月一花 @akiduki1001
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