徒然の黒歴史、悪魔のひとコマと山のお風呂

しおとれもん

第1話超宝もののスコップ

「徒然の黒歴史、悪魔のひとコマと山のお風呂」


 5歳の頃だった。

僕は買ってもらった砂場のスコップセットをお気に入りで、片時も離さず遊んでいた。

自宅に風呂がなかった貧乏な家は毎日銭湯通いをしていた。

夕食後満腹に為りテレビを観てくつろいでいた僕にお父ちゃんが「山のお風呂」へ行こうと言ったので、トイレへ行こうとしていた事は忘れお父ちゃんに促されスコップセットを持ってお父ちゃんと、「山のお風呂」へ行った。

番台を通過し、着替え場で、「おとうちゃんウンコがしたい。」と言って、銭湯の便所へ案内されたのが、薄暗い照明がぼっとん便所で、スリッパはというと、木製の突っ掛けだった。

僕の第一印象は、暗いのが怖いし「うわっ嫌や」木製の突っ掛けに裸足と、裸になっていた僕は身体中便所の匂いが、纏わりつきそうな気がして、「もう止まったわ。」とおとうちゃんに告げた。

「ホンマか?お風呂でしたらあかんで?」と言われて入浴した。

頭髪や身体を洗い終わって最後に湯船に浸かり身体を温めていた頃、なんだかお腹が締め付けられで便意をもよおし、今更薄暗い怖い不潔感の有るぼっとん便所に入りたくなくて、湯船で大をしてもどうせ沈むから僕が、したことをバレずに済むと思いコッソリ腹に力を入れて大をしてしまった!出し切った刹那、背中に大の浮かぶ感触が伝わり、どうしようと逡巡していた時、「ウンコや!」

「誰かウンコしとうぞ!」と騒ぎだした!

もう、おっちゃん!大声で言わんといて。

おとうちゃんにバレる!

背後を見ると20センチくらいの長さのウンコが浮いていた。

一人のおっちゃんの叫びで番台のおばちゃんが飛んで来て、おとうちゃんにガミガミといっていたのを覚えている。

僕は仕方なく持っていたスコップでウンコを掬い排水口へ流した。

それで終わりかというとまだ終わりではなく、湯船の湯を捨てなければ為らなくて、保健所の検査を受けないとダメらしい。

「子供にウンコさせたらアカンで!?エライ損害やわ!」と言っているのが聴こえてきたから帰りにおとうちゃんにこっぴどく、叱られると思い夜空に浮かぶ満月を観ながら歩いておとうちゃんが、聞く。

「なんでウンコしたんや?」

「ずっと我慢しとってんけどな・・・我慢できひんかってん。」とおとうちゃんを見上げて答えると、「我慢できひんかったんか、そうか。」と、ニコニコ笑っていた。

これは妹に知られたくは無いと、戦々恐々だったが、無事に妹に知らされる事無く「悪魔のひとコマ」は、何十年も過ぎて行った。

あの銭湯は顕在で、今や番台のおばちゃんは代替りしていた。

僕がウンコをしたことで僕に怒らなかった事にこれを書いている僕にはお父ちゃんの愛情を犇々と、今感じている。(了)





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