第17話

「エルス様、星が綺麗ですね」


「うん、そうだね」


 私とエルス様は星を眺めながら、笑いあいます。

 なんて綺麗で、素敵な星なのでしょう。

 今日は素晴らしい、とても素晴らしい夜です。


「あの日から……今日でちょうど2年か」


「えぇ、そうですね」


 シエル王子とノエラの処刑から、今日でちょうど2年が経ちました。

 今でもあの日の出来事は、鮮明に思い出せます。

 いつもはうるさく煩わしい2人が、処刑の瞬間だけは静かだったあの日。

 ノエラは最期、忌々しい表情を浮かべてしんだあの日。

 シエル王子も同じく、憤怒の表情を浮かべて死んだあの日。

 あの日のことは、今でも思い出せます。


「あれから色々あったね」


「えぇ……ですけれど、そのおかげで今があります」


 私とエルス王子は、結婚をしました。

 そしてエルス王子は王位を継承し、今では一国一城の主です。王になったのです。

 ここまでの道のりは決して平坦ではなく、厳しい道のりでした。

 ですけれど、そんな道を乗り越えて、私たちの今があるのです。


「綺麗な夜空だ」


「えぇ、そうですね」


「……月も綺麗だね」


 エルス王子は真っ赤な顔で、そう言いました。

 その意味は私も、知っています。


「……ありがとうございます」


 コトッとエルス王子の肩に、頭を預けます。

 大きくて、暖かいエルス王子。

 大変な日々を乗り越えたことで、今の幸せがあるのですね。


 シエル王子とノエラに、ほんの少しだけ感謝をしましょう。

 あのままシエル王子と結婚していれば、私は一生幸せになれなったでしょう。

 毎日暴力を振るわれ、毎日苦痛の日々を送っていたことでしょう。

 何一つ楽しくなく、人生を送る意味を見出せなかったでしょう。


 ですけれど、今は違います。

 エルス王子に出会うことができて、毎日が楽しいです。

 シエル王子との日々では得られない経験や知見があって、毎日が発見の連続です。

 人生を送る意味を、ようやく見つけることができました。


 それに何よりも、エルス王子は顔がいいです。

 もちろんエルス王子の魅力はそれだけではありませんが、顔がいいので毎日一緒にいるだけで幸せなのです。

 シエル王子も決して悪くはなかったですけれど、やはりエルス王子には敵いません。

 顔のいい殿方と一緒にいると、幸せ成分がドンドン分泌されるのです。


 そう考えると、やはりノエラは愚かですね。

 地位や名誉が合っても、顔のいい殿方がいないと真の幸せには届かないのに。

 ……いえ、彼女のことはどうでもいいですね。既に死んだのですから。


「エルス様、ずっと一緒にいましょうね」


「うん、愛しているよ」


 私たちは甘い口づけを、交わしました。

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婚約破棄を待っていたら、妹が婚約者を奪ってくれました 志鷹 志紀 @ShitakaShiki

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